★ なぜ歯周病にはメインテナンスが必要か
2023年4月14日
風邪などと違い、歯周病はよくなった後も引き続き定期的に「メインテナンスを受けるように」と言われます。
「治ったのはずなのになぜ?」と思う人も多いでしょう。これには歯周病が口の中の細菌による感染症である、という特性が深く関係しています。歯周病菌は口の中に棲みつく常在菌の一種で、一度、感染すると完全に排除することは難しく、セルフ・ケアにおいてはプラークコントロールで菌の数を減らすことがポイントになります。しかし、歯にはでこぼこがあり、歯と歯の間や歯と歯肉の間にはすき間があります。毎日の生活の中で完璧なブラッシングを継続することは難しく、こうした場所に少しずつプラークがたまっていきます。歯周病にな田場所の歯は健康な歯に比べ歯肉が下がり気味だったり、歯と歯の間に大きなすき間があいたりしています。このような場所には普通以上に汚れがたまりやすく、セルフ・ケアはさらに難しくなります。また、進行した歯周病は中年以降に多く見られますが、その背景には加齢にともない細菌に対する抵抗力が落ちていることや、歯周病を悪化させるリスクである糖尿病などを抱える人が増えていることがあります。仕事や家庭で心理的ストレスを抱える人も多くなり、口の中のプラークがそれほど増えていなくても、歯周病が悪化しやすい条件がそろってしまうのです。
一度も歯周病を発症していない人と発症している人を比べた調査で、後者の人の方が歯周病を再発しやすいという報告もあります。
こうしたことからセルフ・ケアではとりきれないプラークや歯石をプロの手を借りて取り除くなど、さらに、再発していないか、また新たな歯周病が発症していないかを確認するメインテナンスが大事になってくるわけです。
★ 歯周組織再生療法②
2023年4月8日
歯周組織再生療法の治療効果を得るためにはプラークや歯石をきれいに取り除くことが必要条件です。
この治療では、できるだけ多くの再生を目標に行いますが、残っている骨に形や患者さんの年齢、患者さんの持つからだの修復力などにより、再生できる骨の量には個人差があります。
歯周組織再生療法の適応は主に中等度の歯周病の患者さんです。重度の場合、歯の動揺が大きいため、歯が手術の負担に耐えられない可能性が大きく、無理におこなうと歯を失う危険があります。つまり、重症になる手間で受けることが大事です。一方、軽症の場合、歯槽骨の量はまだ、十分に保たれているので再生療法を受ける必要はありません。
治療ができるか、できないかを決めるもう1つの基準として、残っている歯槽骨の形がどのようになっているかによります。歯槽骨の破壊は歯に沿って縦方向に破壊されている「垂直性の骨吸収」と横方向に破壊されている「水平性の骨吸収」の2タイプがあります。歯周組織再生療法の適応になるのは「垂直性の骨吸収」です。現在の治療法は残っている歯根膜などからの細胞に働きかけることで再生を促すため、水平性の骨吸収に対しては再生を行うことが難しいのです。このほか、治療ができるかどうかを決める要素としとぇ、歯を支えている歯槽骨の状態や根分岐部病変の重症度などがあります。これらを総合的に判断し、治療効果を検討します。
★ 歯周組織再生療法➀
2023年4月5日
歯周基本治療やフラップ手術でプラークや歯石を除去できれば歯周病の進行はストップし、歯肉の炎症も改善します。
しかし、病気によって破壊され、失われてしまった歯肉や歯槽骨は残念ながら完全には回復できません。この失われた歯周組織を可能な限り元に戻そうという治療が歯周組織再生療法です。
歯周組織の中でも歯槽骨が減ることは深刻な問題です。歯を支える土台である骨が大きく減ると歯が安定せず、動揺し、噛みにくい状態が続いてしまいます。同様のない歯に比べ、歯がダメージを受けやすく、歯周病の管理をしていても、将来、歯を失うリスクは高くなります。このため、歯周組織再生療法により歯槽骨を再生させることは、歯の健康を維持するためにも大きなメリットがあります。歯周組織再生療法のもとになっているのは医科でも広く研究されている「再生療法」の考え方です。実は歯科分野での再生療法の導入は、他の分野に比べて進んでいます。一方で、全ての患者さんに効果が得られるものではありません。再生が期待できるケース(適応)も明らかになっています。ご自身の歯が歯周組織再生療法の適応になるのかどうか、また、どのくらいまで骨の再生ができるかなど、主治医によく確認したうえで治療を受けましょう。
★ 歯周外科治療
2023年3月29日
歯周基本治療を繰り返しても歯周ポケットが浅くならない倍医、プラークが歯周ポケットの奥深くに入り込んでいると考えられます。この状態を放置しておくと歯周病が進行していきます。このため次の段階としておこうなうのが歯周外科治療のうちの「フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)」です。「4ミリ以上の歯周ポケットが残っている」ケースが対象となります。
歯周外科治療は局所麻酔で行われます。比較的、短時間(平均的には約一時間程度)で終了しますが、持病などがあって全身状態が悪く、短時間の小手術の負担にも耐えられないと判断された場合は実施できません。また、骨粗鬆症の治療薬であるビスフォスフォネート製剤を使用している患者さんには使用期限にもよりますが、歯槽骨の治りが悪くなる場合が数%報告されている為、原則として歯周外科治療はできません。さらに喫煙している患者さんは手術後の治りがよくないなど、回復が遅くなるので、術前に禁煙をしてもらうことが原則となっています。
フラップ手術では、局所麻酔をした後、歯に沿って歯肉をメスで切開して歯から歯肉を剥離して、歯の根面を露出させ、幹部がよく見えるようにします。この状態でスケーリング・ルートプレーニングをおこない、外側からでは届かなかった部分のプラークや歯石を徹底的に取り除きます。その後、歯肉を元の状態に戻して縫合し、手術を終了します。きちんと治療ができて術後のセルフケアも十分なら、歯周病の進行はストップし、歯周組織の炎症も改善します。
また、フラップ手術では歯周ポケットの改善が十分でない場合があります。このような場合は、「切除療法」をおこない、歯周ポケットの除去を目指します。また、組織の「再生」を目的とした「歯周組織再生療法」があります。ほかにも、歯周組織の形態や見た目を改善することを目的としておこなう「歯周形成手術」などの方法があります。
いずれも歯周外科治療の一環です。土の手術を行うかは、患者さんの病状や希望に合わせて決めていきます。
★ 歯周基本治療②
2023年3月27日
(3)ルートプレーニング
歯周ポケットを奥にある組織(歯の根面のセメント質)に付着したプラークや歯石、その他の代謝物質が入り込んだ病的な表面部分を取り除く処置で、スケーリングに加えておこないます。スケーラーを使って根面を滑らかに整えることで、プラークが再び歯に付着しにくくなります。また、歯肉と歯の根面がくっつきやすくなることで歯周ポケットが浅くなる効果が期待できます。
なお、スケーリングやルートプレーニングを行ったおあとは一時的に知覚過敏がおこりやすくなります。これは根面がきれいになって一部、露出をすることで、外部からの刺激を受けやすくなるためです。数日経つとおさまってきますが、症状が強い場合は知覚過敏治療薬を塗って症状の改善をします。
(4)必要に応じてかみ合わせや虫歯の治療などをおこなう
歯周病を悪化させている原因があれば、その原因を除去するために必要に応じて処置をします。例えば歯周病が進み、グラグラしている歯がある場合、噛んだ時に負担がかかりすぎないようにかみ合わせの調整をしたり、隣り合っている歯と歯を連結して固定させる「暫間固定」、むし歯で穴が開いた部分にプラークがたまる場合は「むし歯の治療」をします。
また、歯並びが悪いことが歯周病悪化の原因になっている場合は矯正治療を進めることもあります。さらに歯ぎしりや食いしばり、タッピング(歯をカチカチさせる)といったブラキシズムの癖があると歯周病が悪化しやすいため、睡眠時にマウスピースを装着して歯や関節への負担を軽減させる治療を行うこともあります。

続 日本人はこうして歯を失っていく著 日本歯周病学会 日本臨床歯周病学会
★ 歯周基本治療➀
2023年3月25日
歯周基本治療は、全ての歯周病の患者さんが受ける最初の治療になります。
歯周基本治療の目的はプラークをしっかり取り除き、プラークコントロールを徹底することです。具体的には「口腔清掃指導」、「スケーリング」、「ルートプレーニング」をおこないます。
(1)口腔清掃指導
患者さんが日々、おこなうセルフ・ケアは歯周病の治癒を左右する大切なプロセスです。
間違った方法でブラッシングをしていたり十分に清掃ができていないと、プラークが歯に残り、歯周病が再発しやすくなってしまいます。一方、自宅でのセルフ・ケアをしっかりおこうなうと、歯肉の回復もぐんとよくなっていきます。このため、治療開始と同時に口腔清掃指導をおこないます。具体的には正しいブラッシングの方法や歯間ブラシ、デンタルフロスなどの使い方を歯科医師や歯科衛生士が指導します。なお、電動歯ブラシを使用している場合、手磨きとは磨き方のコツが異なり、指導方法も変わります。歯周病に詳しい歯科医院では電動歯ブラシの指導もおこなっています。また、内服薬などの影響で唾液が出にくくなっている方には洗口液(マウスウォッシュ)の併用など、患者さんの口の中の状態に応じて使用機材や薬剤を決めていきます。
(2)スケーリング
スケーリングはスケーラーと呼ばれる器具を使い、歯面や歯肉溝・ポケット内の歯根面に付着したプラークを除去します。また、歯石がある場合はそれも除去します。歯石は歯に付着したプラークが除去されないまま、長期間堆積し、唾液の成分によって石灰化した沈着物です。歯石自体には強い病原性はありませんが、その表面が荒いため新たなプラークが付着しやすく炎症の原因となるので取り除かなければいけないのです。
スケーリングは歯科医師や歯科医師の指示を受けた歯科衛生士がおこないます。スケーラーを歯面に当て、プラークや歯石をカリカリと剥がして落としていきます。近年は、超音波を利用して汚れを取り除く「超音波スケーラー」や圧縮した空気を使って振動を起こす「エアスケーラー」などを併用して除去している歯科医院も増えています。いずれの方法でも歯石やプラークを残さず取り除くことが一番大事です。つまり、処置を行う歯科医師や歯科衛生士の技量が重要ということになります。
たとえ、口の中全体が歯周病であっても、スケーリングは通常、一度には行わず、上下二回程度に分けておこないます。一度にたくさんの歯を処置すると、炎症の強い部分は、ブラシがしづらくなったり痛みを感じたりするためです。
★ 治療方針
2023年3月24日
検査が終了したらその結果をもとに治療方針を決めていきます。
治療の方法は主に歯周病の重症度によって決まります。検査でその詳細が判明しているので、それをもとに治療計画を立てることになります。歯周ポケットが3ミリ以下の歯周炎や軽度歯周炎の場合は歯周基本治療で終わることが一般的です。歯周病の広がり具合にもよりますが、積極的な治療(動的治療)のための通院は数回で済みます。中等度以上の歯周炎では歯周外科治療が必要になるケースがありますし、歯周組織再生療法が適応になる場合もあります。なお、市歯周組織再生療法を受けた場合、骨が再生するまでには半年~9カ月ほどかかります。
このほか、かみ合わせの悪い部分を治したり、むし歯を治したりと、歯周病を悪化させている要因がある場合はもう少し治療期間は長めになるでしょう。覚えて頂きたいのは、積極的な治療が一段落しても、歯周病の治療そのものが終わったわけではない、ということです。
歯周組織が改善しても、メインテナンス(SPT<歯周サポート治療>)が必要で、定期的に受信して、検査やクリーニングなどを受けることがとても大切です。
ただし、どこまでどのような治療をするかは患者さんの意見もふまえて決めていくものですので、患者さんの同意を得なければ治療はスタートできません。なぜその治療が必要なのかを歯科医師によく聞いたうえで、納得して治療を受けるようにしましょう。なお、治療が始まってから検査では検出しきれなかった新たな病状が判明することもあります。その場合、治療計画が変更になる事もあり、歯科医師があらためて説明をおこなうことになります。
★ 歯周病の検査 (5)
2023年3月18日
(5)X線検査
X線検査は歯槽骨の状態を見るために重要です。X線写真では骨の部分は白く映り、歯が失われている部分は黒く映ります。骨がどのくらい減っているかや残っている骨の形を見ると、歯周組織再生療法が必要かどうか、治療の適応かどうかのなどの判定ができます。
また、「根分岐部病変」といって歯の根の分岐部(奥歯などで根が二股、三股に分かれている部分)に歯周炎が発症している場合、解剖学的形態から、進行すると治療がさらに難しくなるので、このような部位は清掃をより厳密におこない、歯周病の進行を防がなければなりません。また、分岐部だけに限りませんが、歯髄に病変がある場合もX線画像上で骨がなくなっていることがあるので、根管治療(歯髄の病気があるときに行う治療)が必要になります。なお、歯科治療で使うX線撮影方法にはいくつか種類がありますが、中でも多く使用されるものが「パノラマX線撮影」と「デンタル(歯科用)X線撮影」です。
パノラマX線は上下のあごの骨を含めたすべての歯を撮影できるもので、親知らずの埋伏の状態など全体の様子がよくわかります。
デンタルX線は一部分にフォーカスして撮影したものです。一度に3本までの狭い範囲に限定されますが、その分、虫眼鏡で拡大したように歯槽骨や歯根の様子が細かくわかります。
最近では、立体像の構築ができるX線写真を撮影できる歯科用CTを使用しているところもあります。
★ 歯周病の検査 (3)(4)
2023年3月17日
(3)歯周ポケットの検査(プロービング)
歯周ポケットの深さと歯周組織の炎症の程度をチェックする検査です。
歯周ポケット(歯と歯肉のすき間)にプローブを挿入し、歯肉の縁からプローブ先端までの距離を測ります。通常、1本につき、4か所または6か所を測定し、1ミリ単位で記録します。3ミリ以下はほぼ正常(歯肉炎はこの範囲にとどまる。なお、健康は歯肉溝の深さは1~2ミリです)
それ以上のポケットは深くなればなるほど、歯周病が進んでいる可能性を示しています。歯周ポケットが深いということは歯周病菌が歯肉の内側に入り、組織を破壊している証拠だからです。
また、プロービング時に出血があるかどうかも大事なチェックポイントです。出血はポケット底部に炎症がある証拠で、すでに歯周炎へと進行中である可能性が高いためです。このため、歯周基本治療の後、再度、この検査を行い、出血がなくなれば症状が安定していると判断します。
(4)歯の動揺度の検査
ピンセットなどで歯を挟んで、歯がどのくらい動くのか、どの方向に動くのかを確かめます。炎症が急速に進んでいたり、歯の土台となる歯槽骨が破壊され減っていたりすると歯を支えるものがなくなり、揺れが大きくなります。
このほか、かみ合わせの問題がないか、ブラキシズム(歯ぎしりなど)がないかなど、歯の動揺度や歯周病の部位と関連しそうな異常がないかどうかを確認します。
★ 歯周病の検査(1)(2)
2023年3月15日
(1)問診
患者さんに受診の理由を確認し、気になる症状や異常について聞きます。問題の起こっている部位やその状況がいつ頃から起きているかなどを聞くことも大事です。
例えば、骨粗鬆症の患者さんの場合、服薬している薬によっては、抜歯や歯周外科治療ができません。場合によっては、主治医に連絡をとり、薬の種類を確認することもあります。
また、家族に歯周病の人がいるかどうかや、喫煙の習慣があるかどうか、喫煙している場合、1日あたりの本数。ストレスの状況なども聞き取ります。歯周病を悪化させるリスクがある場合、できるだけ軽減するようにアドバイスをします。喫煙者には、歯周病治療の効果が十分に得られない為、禁煙することをすすめます。
(2)プラークの付着を確認
口の中の細菌の状態を検査します。患者さんにわかるようにプラークがあるところを染め出す「プラーク染色液」を使ったり、歯周プロープ(目盛りが付いた先端が丸い針)などの先端で歯面をこすり、口の中全体のうち、どのくらいの割合でプラークの付着があるかを確認します。
プラークが多いということは、歯肉の奥にも多くのプラークが潜んでおり、歯周病が進んでいる可能性が高くなります。このほか科学的に歯周病菌を調べる方法として、自費診療になります歯周病ポケット内のプラークや唾液を特殊な方法で採取し、歯周病菌のタイプや数を特定する検査(歯周病原細菌検査)もあります。
短期間で急速に進むタイプの歯周病が疑われる場合、この検査が役に立ちます。