★ 歯周外科治療
2023年3月29日
歯周基本治療を繰り返しても歯周ポケットが浅くならない倍医、プラークが歯周ポケットの奥深くに入り込んでいると考えられます。この状態を放置しておくと歯周病が進行していきます。このため次の段階としておこうなうのが歯周外科治療のうちの「フラップ手術(歯肉剥離掻爬術)」です。「4ミリ以上の歯周ポケットが残っている」ケースが対象となります。
歯周外科治療は局所麻酔で行われます。比較的、短時間(平均的には約一時間程度)で終了しますが、持病などがあって全身状態が悪く、短時間の小手術の負担にも耐えられないと判断された場合は実施できません。また、骨粗鬆症の治療薬であるビスフォスフォネート製剤を使用している患者さんには使用期限にもよりますが、歯槽骨の治りが悪くなる場合が数%報告されている為、原則として歯周外科治療はできません。さらに喫煙している患者さんは手術後の治りがよくないなど、回復が遅くなるので、術前に禁煙をしてもらうことが原則となっています。
フラップ手術では、局所麻酔をした後、歯に沿って歯肉をメスで切開して歯から歯肉を剥離して、歯の根面を露出させ、幹部がよく見えるようにします。この状態でスケーリング・ルートプレーニングをおこない、外側からでは届かなかった部分のプラークや歯石を徹底的に取り除きます。その後、歯肉を元の状態に戻して縫合し、手術を終了します。きちんと治療ができて術後のセルフケアも十分なら、歯周病の進行はストップし、歯周組織の炎症も改善します。
また、フラップ手術では歯周ポケットの改善が十分でない場合があります。このような場合は、「切除療法」をおこない、歯周ポケットの除去を目指します。また、組織の「再生」を目的とした「歯周組織再生療法」があります。ほかにも、歯周組織の形態や見た目を改善することを目的としておこなう「歯周形成手術」などの方法があります。
いずれも歯周外科治療の一環です。土の手術を行うかは、患者さんの病状や希望に合わせて決めていきます。
★ 歯周基本治療②
2023年3月27日
(3)ルートプレーニング
歯周ポケットを奥にある組織(歯の根面のセメント質)に付着したプラークや歯石、その他の代謝物質が入り込んだ病的な表面部分を取り除く処置で、スケーリングに加えておこないます。スケーラーを使って根面を滑らかに整えることで、プラークが再び歯に付着しにくくなります。また、歯肉と歯の根面がくっつきやすくなることで歯周ポケットが浅くなる効果が期待できます。
なお、スケーリングやルートプレーニングを行ったおあとは一時的に知覚過敏がおこりやすくなります。これは根面がきれいになって一部、露出をすることで、外部からの刺激を受けやすくなるためです。数日経つとおさまってきますが、症状が強い場合は知覚過敏治療薬を塗って症状の改善をします。
(4)必要に応じてかみ合わせや虫歯の治療などをおこなう
歯周病を悪化させている原因があれば、その原因を除去するために必要に応じて処置をします。例えば歯周病が進み、グラグラしている歯がある場合、噛んだ時に負担がかかりすぎないようにかみ合わせの調整をしたり、隣り合っている歯と歯を連結して固定させる「暫間固定」、むし歯で穴が開いた部分にプラークがたまる場合は「むし歯の治療」をします。
また、歯並びが悪いことが歯周病悪化の原因になっている場合は矯正治療を進めることもあります。さらに歯ぎしりや食いしばり、タッピング(歯をカチカチさせる)といったブラキシズムの癖があると歯周病が悪化しやすいため、睡眠時にマウスピースを装着して歯や関節への負担を軽減させる治療を行うこともあります。
続 日本人はこうして歯を失っていく著 日本歯周病学会 日本臨床歯周病学会
★ 歯周基本治療➀
2023年3月25日
歯周基本治療は、全ての歯周病の患者さんが受ける最初の治療になります。
歯周基本治療の目的はプラークをしっかり取り除き、プラークコントロールを徹底することです。具体的には「口腔清掃指導」、「スケーリング」、「ルートプレーニング」をおこないます。
(1)口腔清掃指導
患者さんが日々、おこなうセルフ・ケアは歯周病の治癒を左右する大切なプロセスです。
間違った方法でブラッシングをしていたり十分に清掃ができていないと、プラークが歯に残り、歯周病が再発しやすくなってしまいます。一方、自宅でのセルフ・ケアをしっかりおこうなうと、歯肉の回復もぐんとよくなっていきます。このため、治療開始と同時に口腔清掃指導をおこないます。具体的には正しいブラッシングの方法や歯間ブラシ、デンタルフロスなどの使い方を歯科医師や歯科衛生士が指導します。なお、電動歯ブラシを使用している場合、手磨きとは磨き方のコツが異なり、指導方法も変わります。歯周病に詳しい歯科医院では電動歯ブラシの指導もおこなっています。また、内服薬などの影響で唾液が出にくくなっている方には洗口液(マウスウォッシュ)の併用など、患者さんの口の中の状態に応じて使用機材や薬剤を決めていきます。
(2)スケーリング
スケーリングはスケーラーと呼ばれる器具を使い、歯面や歯肉溝・ポケット内の歯根面に付着したプラークを除去します。また、歯石がある場合はそれも除去します。歯石は歯に付着したプラークが除去されないまま、長期間堆積し、唾液の成分によって石灰化した沈着物です。歯石自体には強い病原性はありませんが、その表面が荒いため新たなプラークが付着しやすく炎症の原因となるので取り除かなければいけないのです。
スケーリングは歯科医師や歯科医師の指示を受けた歯科衛生士がおこないます。スケーラーを歯面に当て、プラークや歯石をカリカリと剥がして落としていきます。近年は、超音波を利用して汚れを取り除く「超音波スケーラー」や圧縮した空気を使って振動を起こす「エアスケーラー」などを併用して除去している歯科医院も増えています。いずれの方法でも歯石やプラークを残さず取り除くことが一番大事です。つまり、処置を行う歯科医師や歯科衛生士の技量が重要ということになります。
たとえ、口の中全体が歯周病であっても、スケーリングは通常、一度には行わず、上下二回程度に分けておこないます。一度にたくさんの歯を処置すると、炎症の強い部分は、ブラシがしづらくなったり痛みを感じたりするためです。
★ 治療方針
2023年3月24日
検査が終了したらその結果をもとに治療方針を決めていきます。
治療の方法は主に歯周病の重症度によって決まります。検査でその詳細が判明しているので、それをもとに治療計画を立てることになります。歯周ポケットが3ミリ以下の歯周炎や軽度歯周炎の場合は歯周基本治療で終わることが一般的です。歯周病の広がり具合にもよりますが、積極的な治療(動的治療)のための通院は数回で済みます。中等度以上の歯周炎では歯周外科治療が必要になるケースがありますし、歯周組織再生療法が適応になる場合もあります。なお、市歯周組織再生療法を受けた場合、骨が再生するまでには半年~9カ月ほどかかります。
このほか、かみ合わせの悪い部分を治したり、むし歯を治したりと、歯周病を悪化させている要因がある場合はもう少し治療期間は長めになるでしょう。覚えて頂きたいのは、積極的な治療が一段落しても、歯周病の治療そのものが終わったわけではない、ということです。
歯周組織が改善しても、メインテナンス(SPT<歯周サポート治療>)が必要で、定期的に受信して、検査やクリーニングなどを受けることがとても大切です。
ただし、どこまでどのような治療をするかは患者さんの意見もふまえて決めていくものですので、患者さんの同意を得なければ治療はスタートできません。なぜその治療が必要なのかを歯科医師によく聞いたうえで、納得して治療を受けるようにしましょう。なお、治療が始まってから検査では検出しきれなかった新たな病状が判明することもあります。その場合、治療計画が変更になる事もあり、歯科医師があらためて説明をおこなうことになります。
★ 歯周病の検査 (5)
2023年3月18日
(5)X線検査
X線検査は歯槽骨の状態を見るために重要です。X線写真では骨の部分は白く映り、歯が失われている部分は黒く映ります。骨がどのくらい減っているかや残っている骨の形を見ると、歯周組織再生療法が必要かどうか、治療の適応かどうかのなどの判定ができます。
また、「根分岐部病変」といって歯の根の分岐部(奥歯などで根が二股、三股に分かれている部分)に歯周炎が発症している場合、解剖学的形態から、進行すると治療がさらに難しくなるので、このような部位は清掃をより厳密におこない、歯周病の進行を防がなければなりません。また、分岐部だけに限りませんが、歯髄に病変がある場合もX線画像上で骨がなくなっていることがあるので、根管治療(歯髄の病気があるときに行う治療)が必要になります。なお、歯科治療で使うX線撮影方法にはいくつか種類がありますが、中でも多く使用されるものが「パノラマX線撮影」と「デンタル(歯科用)X線撮影」です。
パノラマX線は上下のあごの骨を含めたすべての歯を撮影できるもので、親知らずの埋伏の状態など全体の様子がよくわかります。
デンタルX線は一部分にフォーカスして撮影したものです。一度に3本までの狭い範囲に限定されますが、その分、虫眼鏡で拡大したように歯槽骨や歯根の様子が細かくわかります。
最近では、立体像の構築ができるX線写真を撮影できる歯科用CTを使用しているところもあります。
★ 歯周病の検査 (3)(4)
2023年3月17日
(3)歯周ポケットの検査(プロービング)
歯周ポケットの深さと歯周組織の炎症の程度をチェックする検査です。
歯周ポケット(歯と歯肉のすき間)にプローブを挿入し、歯肉の縁からプローブ先端までの距離を測ります。通常、1本につき、4か所または6か所を測定し、1ミリ単位で記録します。3ミリ以下はほぼ正常(歯肉炎はこの範囲にとどまる。なお、健康は歯肉溝の深さは1~2ミリです)
それ以上のポケットは深くなればなるほど、歯周病が進んでいる可能性を示しています。歯周ポケットが深いということは歯周病菌が歯肉の内側に入り、組織を破壊している証拠だからです。
また、プロービング時に出血があるかどうかも大事なチェックポイントです。出血はポケット底部に炎症がある証拠で、すでに歯周炎へと進行中である可能性が高いためです。このため、歯周基本治療の後、再度、この検査を行い、出血がなくなれば症状が安定していると判断します。
(4)歯の動揺度の検査
ピンセットなどで歯を挟んで、歯がどのくらい動くのか、どの方向に動くのかを確かめます。炎症が急速に進んでいたり、歯の土台となる歯槽骨が破壊され減っていたりすると歯を支えるものがなくなり、揺れが大きくなります。
このほか、かみ合わせの問題がないか、ブラキシズム(歯ぎしりなど)がないかなど、歯の動揺度や歯周病の部位と関連しそうな異常がないかどうかを確認します。
★ 歯周病の検査(1)(2)
2023年3月15日
(1)問診
患者さんに受診の理由を確認し、気になる症状や異常について聞きます。問題の起こっている部位やその状況がいつ頃から起きているかなどを聞くことも大事です。
例えば、骨粗鬆症の患者さんの場合、服薬している薬によっては、抜歯や歯周外科治療ができません。場合によっては、主治医に連絡をとり、薬の種類を確認することもあります。
また、家族に歯周病の人がいるかどうかや、喫煙の習慣があるかどうか、喫煙している場合、1日あたりの本数。ストレスの状況なども聞き取ります。歯周病を悪化させるリスクがある場合、できるだけ軽減するようにアドバイスをします。喫煙者には、歯周病治療の効果が十分に得られない為、禁煙することをすすめます。
(2)プラークの付着を確認
口の中の細菌の状態を検査します。患者さんにわかるようにプラークがあるところを染め出す「プラーク染色液」を使ったり、歯周プロープ(目盛りが付いた先端が丸い針)などの先端で歯面をこすり、口の中全体のうち、どのくらいの割合でプラークの付着があるかを確認します。
プラークが多いということは、歯肉の奥にも多くのプラークが潜んでおり、歯周病が進んでいる可能性が高くなります。このほか科学的に歯周病菌を調べる方法として、自費診療になります歯周病ポケット内のプラークや唾液を特殊な方法で採取し、歯周病菌のタイプや数を特定する検査(歯周病原細菌検査)もあります。
短期間で急速に進むタイプの歯周病が疑われる場合、この検査が役に立ちます。
★ 歯周病の検査
2023年3月14日
歯周組織のほとんどは肉眼では見えない部分にあるため、様々な方法で検査する必要があります。検査には歯肉を触るものも含まれるため、腫れや痛みなどがひどい場合は応急処置(プラークコントロールや抗菌剤の投与など)をおこない、落ち着いてから実施します。
治療を開始した後も「治療効果が上がっているかどうか」を確認するために検査をします。さらに治療が一段落した後もメインテナンスの際に定期的に検査を行い、「再発していないか」を確かめていきます。代表的な歯周病の検査について、解説します。
(1)問診
(2)プラークの付着を染色液でプラークを染めて%で表す)
(3)歯周ポケットの検査
(4)歯の動揺度の検査
(5)X線検査
詳しくは次にて解説します。
★ 歯周病治療の流れ
2023年3月10日
最も大事なのは歯周基本治療です。
歯周病治療の大きな流れは「動的治療」と「メインテナンス」です。
両方とも歯科医院で行う治療に含まれています。動的治療の中身は検査(X線撮影、歯周病組織検査、写真撮影など)、歯周基本治療(ブラッシングのやり方指導、スケーリング・ルートプレーニング)、歯周外科治療(フラップ手術や歯周組織再生療法)です。
歯周病の原因は、歯に付着した最近の塊である「プラーク」です。プラークを取り除かなければ、歯周病の進行を食い止めることはできません。そこで治療の第一ステップは、プラークを自分自身で除去できるようなブラシの選択ややり方の指導に始まり、プラークが唾液の成分などで固まってできた歯石を取り除くことに主眼をおきます。これは、「歯周基本治療」と呼ばれるものです。歯周菌治療には歯科医院でスケーラーという器具を使って、歯の表面に沈着した歯石を除去することを主眼としています。これらはスケーリングという処置で、主に歯科衛生士が行います。続いて歯肉の下のザラザラした根面を滑らかにすることをルートプレーニングといいます。こうすることで汚れが再び付着しにくくなるだけでなく、歯肉と根面がぴったりくっついて。歯周ポケットが浅くなる効果が期待できます。
一通り処置が終わったら、治療効果を確認するために歯周ポケットの深さを再度計測するなどの検査を行います。根面の汚れがしっかり取り除けるまで治療とこの検査を繰り返します。軽度の歯周炎までなら、これらの基本的な処置で歯肉の状態はかなりよくなります。
炎症がおさまらなかったり、歯周ポケットが浅くならない場合には次の段階として、歯周外科治療に移行します。歯周外科治療では主にフラップ手術をおこない、歯肉を根面から一度剥がしてプラークや歯石を取り除き、歯肉を元に戻し、歯肉が安定するのを待ちます。歯周組織の再生が期待できる場合は、歯周組織再生療法をおこなうこともあります。
なお、すべての治療が終わったら一段落となりますが、歯周病の治療そのものはこれで終わりではありません。歯周組織が改善しても、時間の経過とともに再びプラークや歯石が沈着して、歯周病が再発するリスクが高まるからです。
このため、定期的に歯科医院を受診して「メインテナンス」をうけていただき必要があります。メインテナンスでは、セルフ・ケアでは落としきれないプラークや歯石を除去し、歯周組織の状態を検査することで歯周病を予防していきます。
続 日本人はこうして歯を失っていく
著 日本歯周病学会・日本臨床歯周学会
★ 歯周病の人はインプラント治療をしてはいけない!?
2023年3月7日
未治療の歯周病があり、適切な治療を受けていない人がインプラントを入れると、うまくインプラントが生着しないばかりか、炎症が起きてインプラント周囲炎になりやすいことが分かっています。
鶴見大学のグループは、インプラントと天然歯の両方がある患者さんの口の中から代表的は6つの歯周病菌を取り出して調べました。その結果、インプラント周囲の歯肉ポケットから検出される細菌と、天然歯から検出される細菌で同じ種類のものが多いことが分かりました。
また、天然歯の歯周病が進行している人では、悪玉菌と呼ばれる病原性の高い歯周病菌、レッドコンプレックスの3種が目立って多いという結果が得られたのです。さらに同一の歯周病菌を詳しく調べてみると菌株が高い確率で一致。これらのことから、天然歯の歯周病菌が唾液を介してインプラント周囲に感染し、炎症やインプラント周囲炎の引き金になっていることが考えられるのです。