★ 酸蝕歯とう蝕の違い
2023年11月25日
簡単にいうと、虫歯は一部分、酸蝕歯は広範囲のことを指します。
歯は、カルシウムやリンなどのミネラル成分でできていて、酸に触れると化学反応が起こり分解され溶けてしまいます。むし歯は、むし歯菌が出す酸によって歯が溶ける病気で、歯の溝や歯と歯の間など汚れのたまりやすい場所から歯が溶け始めます。ですので、むし歯のできる範囲は限られています。
それに対して、酸性の食べ物やの身も度がお口の中に入ってきて、繰り返し歯と接触することで溶け始める現象を歯の酸蝕といい、酸蝕によって病的に溶けてしまった歯を酸蝕歯と呼んでいます。飲食物は、お口の中全体にいきわたりますから、広範囲の歯に被害が拡大します。
歯が溶ける原因は、むし歯菌の出す酸だけではありません。身近な市販の酸性飲食物でも、その食べ方・飲み方次第では歯が溶けます。
この場合、酸性飲食物を摂った直後の歯の表面は軟らかくなって柔らかくなっています。(軟化)
また、持続性の嘔吐がある場合でも、胃酸の影響で歯が溶けます。
★ フッ化物の安全性は科学的根拠に裏付けられている
2023年11月24日
信頼できる期間の正しい情報から判断をしてください。
フッ素は、自然界では他の元素と化学結合し、フッ化物とし地殻、土壌、海水、大気中に存在します。
土壌中には約280ppm、海水中には約1.3ppmのフッ化物が含まれていて、濃度の違いはあれども、地球上の水、すべての食べ物や飲み物には1945年にグランドラビッズで、初めて水道水フロリデーションが実施されて以来、あらゆる角度から継続的に調査・研究が積み重ねられてきました。信頼できる査読制度によって支持された何万もの研究論文が、水道水フロリデーションの安全性を裏付け、その結果がフッ化物応用全体の安全性につながっています。
インターネットには誤った情報と正しい情報が混在しています。
不安を抱かせる言葉にとらわれ、フッ化物という有益なものを十分に利用しなかったために虫歯を発症するというのはもったいないことです。信頼できる専門機関の正しい情報に耳を傾けるようにしましょう。
★ フッ化物は低濃度で高頻度の使用が効果的
2023年11月22日
1950年代までは、フッ化物の作用は全身的、あるいは歯が生え始める前にはたらくと信じられていました。
その後の研究により、低濃度フッ化物イオンが、歯の表面や結晶周辺に存在し、脱灰を抑制し、再石灰化を促進することが判明しました。ただし、口腔内でその効果を発揮するためには、フッ化物イオン濃度が最低でも0.03~0.5ppmは必要と考えられています。
ところが、生理的な唾液中の濃度は0.02ppm未満です。
この足りない濃度を補うのがフッ化物応用の目的で、そのためには「低濃度」を「高頻度」に応用するのが大切です。
歯科医院で患者さんにしっかり説明できる本 著 クインテッセンス出版株式会社
★フッ化物には「局所応用」と「全身応用」がある
2023年11月21日
局所応用では、唾液とプラーク中に供給された低濃度のフッ化物が脱灰(歯のミネラル分が溶けだすこと)を抑えて、再石灰化(溶けだしたミネラル分が唾液の力で元の状態に戻ること)を促進します。一方、全身応用では、フッ化物は血液を介して体内に取り込まれ、歯が生え始める前の機関には、歯の構造の一部となり、歯質の強化につながります。
水道水フロリデーションが実施されている国では、生まれた時より水道水から適切なフッ化物を摂取(全身応用)できるので、むし歯になりにくい歯が育ちます。しかし日本においては、フロリデーションが未実施であり、フッ化物を摂取できる錠剤も販売されていません。
ですから、歯が生え始める時期(生後約6か月)から高齢者(歯が一本でも残っている場合)まで、フッ化物配合歯磨き剤やフッ化物洗口材を工夫して使用することになります。
★ フッ化物洗口は国内で広まり始めている
2023年11月20日
日本の虫歯予防では、これまでブラッシング(歯磨き)・甘味制限・定期健診の三点が強調されてきましたが、じつはこれらは科学的根拠に乏しいと指摘されています。対して、フッ化物(フッ素)の適正は応用は、虫歯予防に有益であることが科学的にも統計的にも実証されています。
新潟県では、1970年から学校などでの集団的フッ化物洗口を始めました。集団的フッ化物洗口が始まる前の3歳時には、一人平均むし歯数は、都道府県のなかでも中ほどの順位なのですが、幼稚園や小学校での集団的フッ化物洗口を経た12歳では、一人平均むし歯数は大幅に減少し、14年連続で1位となっています。また、県内の公立小学校全てにフッ化物洗口を導入した佐賀県も、一人平均むし歯数が3歳から12歳で大きく減少しています。
現在、国内では約127万人の子供にフッ化物洗口が実施されており、市・県単位での普及拡大が各地で予定されています。
★ 根面う蝕は治療が困難
2023年11月18日
歯の根がむき出しになるということは、いわば家の土台がむき出しになっているようなものです。むし歯菌というシロアリに土台が食べられてしまわないように、いっそう予防に力を入れなくてはなりません。
歯の根のむし歯は、いったんでき始めるとその後も増え続け、予防することが難しくなります。
また、症状が出にくく発見が遅れることもあります。
治療も難しく、再発防止も多く、進行すると歯冠と呼ばれる歯の頭の部分がなくなり、歯の根だけになってしまい、結果的に歯を失う可能性が高くなります。
★覚えておこう!★
超高齢社会となった日本では、今後、根面う蝕が大きな問題となってくると思われます。
徹底したプラークコントロールと食事指導、中程度濃度のフッ化物使用が推奨されていますが、高齢者の生活習慣を変えるのは非常に困難であり、市販のフッ化物の濃度にも上限があります。高齢の患者様は、根面う蝕ができる前から、正しい予防習慣を身に付けることが大切です。
★ フッ化物を効果的に使い予防する
2023年11月17日
飲食をすると、糖分がプラークの中に取り込まれ、細菌により分解されます。その際、プラーク内のpHは酸性に傾きますが、その値は飲食後10分程度がもっとも高くなり、その後60分ほどかけて徐々に中和されていきます。
強い酸性になる前に、食後早めにブラッシングをして、細菌の塊であるプラークと、えさとなる糖分を取り除きましょう。唾液には酸を中和して歯を守る作用があるのですが、寝ているうちは唾液の分泌量が減りますので、寝る前のブラッシングは重要です。
ブラッシングの際は再石灰化を促進させるために、フッ化物入り歯磨き剤を使いましょう。
磨き方としては、歯の健康の先進国であるスウェーデンのイエテボリ大学で発案された「イエテボリ法」がおすすめです。余裕があれば、ブラッシングとブラッシングの間に、フッ化物洗口をプラスするとよいでしょう。
★イエテボリ法でのブラッシングのしかた★
➀フッ化物配合歯磨剤を歯ブラシ面いっぱいにつける(6歳未満は量と濃度に注意)
②口腔内全体に広がるように2分間ブラッシング
③泡を吐き出さずに10㏄ほどの水を口に含む
(口に含む水の量は、おちょこ一杯分や手のひらですくったくらい)
④30秒間、泡と水を口腔内で混ぜ合わせ、歯間部を行き来させるように洗口してから吐き出す。
うがいはせず、2時間は飲食しない。就寝真のブラッシングの場合はそのまま就寝する。
(口をゆすがないと気持ち悪いという人は、何もつけずに磨いた後に、フッ化物配合歯磨剤をつけて、イエテボリ法で磨く)
★ 規則正しい食生活で予防する
2023年11月14日
食生活からむし歯のリスクを改善するポイントは、「砂糖の量」「飲食回数」「時間」「何を食べるか」の4つです。まずは間食の回数を減らしましょう。回数を減らせば自然と量も減ってきます。
どうしても回数を減らせないときは、キシリトールなどの代用糖を使ったノンシュガーのお菓子にしましょう。
次に、規則正しい食生活をしましょう。時間を決めておくことも重要です。だらだら食いは避け、食べる/食べないのON/OFFをしっかり切り替えましょう。おやつはキャラメルよりはチョコレートを選ぶ、キャンディーは噛んで食べるなど、お口の中から早くなくなるものを選びます。スナック菓子のような、甘くないけれどお口の中に残りやすいものには要注意。果物やスポーツドリンク、野菜ジュース、缶コーヒーなどには、意外に糖分が含まれていることがありますので気をつけましょう。
★覚えておこう!★
食事に関するリスクが高い方は、毎日の食事を記録しましょう。
記録することで、果物、野菜ジュースや寝酒など、普段気づいていない糖質の摂取が発見できることもあります。問題点を確認したら、どこを改善できるか決めましょう。その際に、食品の種類によって、停滞性の高低(どの程度お口の中に残りやすいか)を考えたり、代用糖を用いたお菓子、チーズやソーセージなど糖質を含まない食品への変更を考えてみるのもよいでしょう。
★ う蝕は予防できる
2023年11月13日
むし歯菌のえさとなる砂糖などを減らすには、摂取量を減らすことも大切ですが、飲食の回数や、お口の中に残りにくいものを選ぶなどの配慮も必要です。スポーツドリンクや缶コーヒー、果物などに含まれる糖分にも注意してください。
ブラッシングでは、丁寧に磨くのに加え、フッ化物を使用しましょう。フッ化物は歯質を強くするだけでなく、再石灰化を促進します。フッ化物がお口の中に長く残っているほど、再石灰化は促進さえれます。ですから、できるだけフッ化物をお口の中に残すようにするため、ブラッシングの後はお口をゆすがないようにするか、ごく少量の水で一回だけゆすぐようにしましょう。
★覚えておこう!★
う蝕は「脱灰と再石灰化を繰り返すプロセス」といわれています。予防の為には、脱灰の時間を短くし、再石灰化の時間を長くします。
予防の大きな因子となるのが「食事」で、なかでも飲食回数がもっとも影響してるとされます。
しかし、臨床研究で食事について証明することは難しく、エビデンスレベルの高い研究はありません。その反面、フッ化物はよく研究され、効果が証明されています。歯面の抵抗性を高めるだけでなく、再石灰化を促進します。
「リスクのない人はいない」「誰でも少なからずリスクを有している」という前提で考えましょう。
基本的な予防においては、予防行為が多くの人々の日常に正しく取り入れられるために、安全、簡便、安価で、特別な機材や薬剤を要せず、誰もがどこでも行える方法を提案することが大切です。
それにより、1人の患者さんから、家族、恋人、友人、職場へと多くの広がりが期待できます。
★ う蝕のリスクは人により異なる
2023年11月10日
むし歯のなりやすさを、私たちは「う蝕リスク」と呼んでいます。リスクが低ければ基本的な予防法でよいのですが、リスクが高い人は、他の人よりも予防に力を入れなくてはなりません。しかし、リスクが高い人すべてに同じような方法をおこなえばよいかといえば、そうではありません。リスクを高めている要因は人によって異なりますので、それぞれの人に合わせたアプローチが必要です。
よく診査して、リスクに合わせた予防計画を立てていきましょう。変えられるリスクがあるなら、どのように変えてくのか、変えられないリスクがあるなら、それに代わる方法はないのかを、一緒に考えていきましょう。