石田歯科
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★ セカンドオピニオンを聞く

2023年5月31日

治療に疑問や不安が生じた場合は他の歯科医師にセカンドオピニオンを聞いてみるのも1つの方法です。歯周病専門の歯科医師であっても、治療方針や治療計画が異なる場合があります。医科である程度、進んだ癌を手術するべきか、やめるべきかで判断が異なることがあるように、重い歯周病ほどそうした場面は出てきます。抜歯するかしないかもよくあるケースで、グラグラしている歯を、「抜いたほうがいい」という歯科医師もいれば、「残した方がいい」という歯科医師もいます。

歯周病に詳しい歯科医師であれば、このように治療方針が異なる場面が出てくることを良く知っています。ほとんどの歯科医師が快く、セカンドオピニオンを受けることに理解を示してくれるでしょう。嫌がる歯科医師は良医とはいえません。ただし、歯周病関連の治療でセカンドオピニオンを聞く場合、もう一人の歯科医師もこの分野の歯科医師であるべきでしょう。

セカンドオピニオンを受けたい旨をいうと、エックス線画像を含む診療情報を提供してくれるところが一般的です。歯冠どおポ二音先があらかじめ分かっていれば、その歯科医院と連絡を取り合ってくれるケースもあります。セカンドオピニオンを受けた後に元の歯科医師のところに戻りたい場合も、もちろん可能です。それを含めてのセカンドオピニオンなのです。

最後になりますが、一生付き合えるいい歯科医師に出会うためには患者さんにもぜひ、歯周病のことを良く理解してほしいと思います。歯科医師の説明も理解できるので、疑問点について、的確に質問できるようになります。

 

続 日本人はこうして歯を失っていく

著 日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会

★ 通い始めたしかいいに疑問を感じたら、まずはきちんと話をしてみよう

2023年5月30日

実際に通い始めてみると「思っていたのと違うな」と感じるなどで、歯科医師を変えたくなることもあるでしょう。歯科医師も人間ですから、お互いの相性もあります。歯周病の治療は歯科医師と10年、20年と長く付き合っていくことになるので、我慢を続けるくらいであれば、思い切って別の歯科医院に変えた方がいいでしょう。

ただ、治療に関する不安や疑問点が、歯科医院を変えたくなる理由だとすれば、まずは思い切って歯科医師に話をしてみることをお勧めします。

 

こんなケースがあります。ようやく見つけた歯周病の専門医のもとに通い始めた患者さんに丁寧な説明、治療をしてくれるところは気に入ってましたが、通院回数が多いことに疑問を感じていました。治療で痛みがなくなり、「今日で終わりか?」と思ったら、「また、来週来てくださいね」の繰り返し。「本当はよくなっているのに、利益のために通院させようとしているのでは」という疑念もわいてきました。

 

そこで思い切って聞いてみたところ、患者さんは重度の歯周病で初診時には歯肉に強い炎症があったため、これがおさまるのを待って慎重に処置を進めていたことが分かりました。炎症がひどい状態で歯石を取り除いたり、歯肉を開いてフラップ手術をしたりすると、健康な歯肉にも悪影響を及ぼし、歯肉が下がるなど見た目も悪くなりやすいのです。

概要については歯科医師も説明をしていましたが、細かいところまでは伝わっていなかったようです。患者さんは歯科医師がまとめてを治療をしない理由も初めて知りました。そしてこの歯科医師が自分のために丁寧な処置をしてくれていたことを知り、それからは全面的に信頼を置いて治療を受けることができるようになりました。

★ 通院開始後

2023年5月29日

➀患者さんの質問には必ず答えてくれる

 

治療計画に納得してスタートしても、実際に治療が始まるとわからない部分、不安なことはたくさん出てくるものです。良医であればこうした患者さんの気持ちに寄り添い、質問にきちんと答えてくれます。「治療の際は歯が痛むことはないのか?」「治療後はすぐに食事ができるのか?夜にはお酒を飲んでいいのか?」「口をずっと開けているのがつらいのだが、そのときはどうすればいいのか?」など、何でも聞いてみましょう。治療中に話したい場合は「手を挙げてもらえればすぐに治療をストップしますよ」などと言ってくれるでしょう。

また、良医であれば患者さんの歯の10年後、20年後の予測ができます。歯は毎日使うものですから永遠に同じ状態を維持できるわけではありません。その歯が将来どうなるか、ダメになった場合にどのような選択肢があるかなどについても見通しをたて、その対策について説明してくれるでしょう。これは歯科医師がその患者さんと長く付き合っていく覚悟、口の中をいい状態に保ち続けてあげたいという意思の表れなのです。

 

②手鏡を持たせて説明する

 

治療のとき、歯科医師や歯科衛生士から手鏡を渡され「これで口の中を見てください」といわれた経験はないでしょうか。

手鏡は患者さん自身に口の中の状態を確認してもらうためのものです。歯肉の腫れや色を確認したり、ブラッシング指導の際に磨き残しをチェックしたり、さまざまな場面で使われます。「いちいち面倒だな」と思うかもしれませんが、患者さん自身に課題を認識してもらい、治療に参加してほしいという歯科医師や歯科衛生士の熱意のあらわれです。

 

③メインテナンスの患者さんが多い

 

メインテナンスの患者さんが多い歯科医院はそれだけ歯周病治療に熱心で精通しており、患者さんに治療計画をきちんと説明している証拠です。待合室で他の患者さんにメインテナンスを受けに来ているのかどうか、聞いてみるのもいいでしょう。また、受付スタッフが、「今日は定期健診ですね」「次回のメインテナンスはいつにしましょうか」などと声をかけている患者さんが多いことも目安です。

また、こうした歯科医院ではスタッフが治療時から、メインテンスの大切さについて繰り返し話していることでしょう。「うるさいな」と思うこともあるかもしれませんが、これはスタッフ一同が真剣に治療に取り組んでいる証拠でもあるのです。

 

④熱心な歯科衛生士がいる

 

「プラークコントロール」が治療の中心となる歯周病では、歯科衛生士のスキルが歯科医師と同じくらい重要とされています。プラークや歯石を取り除く処置は、治療、メインテナンスとともに、歯科衛生士が中心となって取り組みます。メイン手ナンスの時期に入ると歯科医師よりも歯科衛生士との付き合いの方が長くなることが一般的です。

歯科衛生士がプラークや歯石を残さず、完璧に取り除く技術は簡単に取得できるものではなく、歯周病の知識を学ぶと同時に、多くの経験を積む必要があります。経験を通して、ほんのわずかな歯石でも取り残しがあったり、日々のブラッシングで磨き残しがあると、歯肉の炎症が再び起こってくる歯周病の怖さを目のあたりにしているからこそ、技術のスキルアップや患者さんのブラッシング指導にも熱がはいるというわけです。

良医は熱意があり腕のいい歯科衛生士を雇っているものですが、歯科衛生士の腕を示す資格としては日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会が認定する認定歯科衛生士が一つの目安になります。

歯周病の知識を学び、技術を習得した歯科衛生士であることの証明だからです。

なお、歯科衛生士は歯科医師と同様に、担当制であることが望ましいでしょう。歯科衛生士は患者さんと話す機会が増えることで性格状況を詳しく知ることができ、より患者さんに会った適切な処置、セルフ・ケアの提案ができます。

 

⑤治療内容によっては他の歯科医師を紹介する

 

自分の得意でない分野の治療が必要になったら、適宜、他の歯科医師に紹介をする────、これはとても大事なことです。よくあるのは親しらずの抜歯をする必要が出てきた場合です。親知らずは歯の向きや状態によっては抜歯時のリスクが大きいこともあり、このような場合は専門の技術を持った口腔外科の歯科医師にやってもらうほうが安心です。患者さんにしてみれば、「主治医が自分でできないなんて実力がないのだろうか」と考えてしまいがちですが、それは大きな誤解で、むしろ、患者さんのことを思っているからこそ紹介するのです。

 

⑥定期健診の案内がしっかりしている

 

歯周病は症状が落ち着いた後も定期的にメインテナンスを受けることが大事ですが、症状が落ち着くとついついさぼってしまうという患者さんが多いのも事実です。いい歯科医院はこうしたことがないように定期健診(メインテナンス)の案内をしっかり行っております。やり方はさまざまで、患者さんに来院の予約を取ってもらっているところもあればハガキで連絡するところ、電話やメールで連絡したり、これらを組み合わせているところもあります。

 

⑦歯だけでなく、全身の健康指導を行う

 

歯周病は歯を失うだけでなく、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞など全身の病気と深い関連があります。例えば進行した歯周病があると糖尿病も悪化します。すでに生活習慣病などにじゃ買っている患者さんにとっては、病状に直結する大事な情報になるので、良医であれば患者さんにこうしたことをきちんと話します。問診表などでからだの病気についてあらかじめ聞いたりもします。

また、良医は医師とも連携をしています。治療と直接、関係が無くても患者さんがからだの不調を訴えたり、健康についての相談を受けたりした場合は必要に応じて医師を紹介してくれるものです。

 

⑧繰り返し禁煙をすすめる

 

タバコは歯周病を確実に悪化させます。喫煙をしている患者さんにたばこの害について話し、禁煙を勧めてくれることは良医である証拠です。禁煙のためのパンフレットなどを見せて熱心に禁煙支援に取り組む歯科医院があります。依存度が高く、やめたいけれどやめられない、といった場合は禁煙外来を紹介してくれるはずです。

 

 

★ 通院初期

2023年5月26日

➀院内や機器、スタッフの身だしなみが清潔

 

歯周ポケットを計測したり、プラークや歯石を除去したり、歯肉をメスで開いたりというような検査や処置が日常的におこなわれている歯科医院では、処置によってできた傷に病原菌が感染しないように、最大の注意をしなければなりません。

また、多くの患者さんがやってくる環境の中では専用の装置を使って治療器具の消毒、滅菌を実施したり、必要に応じてディスポーザブル(使い捨て)の器具を使うなど患者さんを介しての感染が起こらないよう、衛生管理への高い意識が求められます。

こうした点を見極めることは一見、難しそうに思えます。しかし、実はところどころにチェックポイントはあるのです。まず、歯科医院に足を踏み入れた際「清潔感がある」と感じられること。治療台(デンタルユニット)の周辺、治療器具、トイレなどを見たときに汚れていない、ホコリがたまっていない、歯科医師や歯科衛生士の身だしなみに清潔感があることも目安になります。

 

②必要な検査をしたうえで、病状や治療計画を丁寧に説明してくれる

 

患者さんは何らかの症状があって歯科医院に行くことがほとんどです。「痛みや腫れの原因は何だったのか?悪い病気ではないのか?」「治療で良くなるのか?」「どんな治療でどのくらい通えばよくなるのか?」とたくさんの不安や疑問を抱えているはずです。

こうした点について、歯科医師の方から丁寧に説明してくれる、それが良医です。説明の前提として必要な検査を実施してくれることはいうまでもありません。歯周病の場合はX線撮影のほか、歯周ポケットの深さを調べたり、出血の有無などを確認したりという検査をきちんと実施した上で、検査結果を説明しながら、「どうやったら今の症状を抑えられ、再発を予防できるか」といった治療計画を示します。

X線画像の見方などをわかりやすく解説してくれる歯科医師ならなおよいでしょう。また、治療計画については、神座産の予防もちゃんと聞き、通院頻度などの相談に乗ってくれることも大事でしょう。治療計画を納得した上でスタートしましょう。

 

③自由診療は見積もりを出す

 

保険診療は全国一律、どこでもほぼ同じ料金で受けられるのに対して、自由診療は歯科医院ごとに料金が違い、人によっては高いと感じる場合もあるでしょう。ただし、保険診療では使える治療機器や素材が治療ごとに決まっているのに対して、自由診療は限定されず、その分、きめ細やかな治療、長持ちする治療が実現できることは確かです。また、料金が高い分、診る患者さんを限定できるので、一人当たりに十分な治療時間をかけられる点もメリットです。歯科医院を選ぶ場合はどちらの診療スタイルなのかを確認し、治療の特徴やメリット、デメリットを聞いた上で選びましょう。特に自由診療では料金がいくらかかるのかを確認し、治療前に見積もりを出してもらいましょう。これを拒否する歯科医院はいい歯科医院ではありません。

★ 受診する前

2023年5月26日

➀歯周病専門医・認定医であることが目安

 

歯周病の治療はこの分野に詳しい歯科医師のもとで受けましょう。そして、担当制であることが望ましいです。大学病院などの歯科では「歯周病外来」「保存科」などと表示されています。

一方、一般の歯科医院は「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「口腔外科」の4つのみしか標榜科目が認められていないため、わかりにくものです。そこで歯周病に詳しい歯科医師の目安となるのが「歯周病認定医」または「歯周病専門医」の資格です。

認定医や専門医の制度は、各学会が専門知識と技術を持った歯科医師を養成するために設けている制度です。歯周病の認定医制度については、日本臨床歯周病学会と日本歯周病学会が設けています。

日本臨床歯周病学会では会員であり3年以上歯周病の治療にかかわり、かつ研修施設で3年以上の研修を受け、認定試験に合格した歯科医師に「歯周病認定医」の資格を与えています。日本歯周病学会では学会に所属して3年間、指定された研修の受講などの条件をクリアし、認定試験に合格した歯科医師に「歯周病認定医」の資格を与えています。

認定医の試験では、歯周病の患者さんの治療例を複数、提出することが求められます。治療例は歯周病の進行がおさまった後のメインテナンス期間も診た上で、治療がうまくいったものを提出しなければならないので、簡単ではありません。

さらに歯周病専門医になる条件は厳しく、これら2つのどちらかの認定医資格を取得した後、日本歯周病学会の認めた研修施設に通算2年以上所属し、歯周病学の研修と臨床試験を有するなどの条件をクリアしたうえで、専門医試験に合格することで初めて取得できるものです。

その後も登録後5年ごとに更新が必要で、そのための条件として出席しなくてはならない講習会などもたくさんあります。認定医や専門医の資格認定証は歯科医院の待合室に提示されていることが多いです。また、歯周病専門医は厚生労働省から広告できる資格名として認められているので、歯科医院の看板やホームページに記載があることもあります。

また、歯周病認定医、歯周病専門医の全国リストは各学会(日本歯周病学会と日本臨床歯周病学会)のホームページにも掲載されており、近くにその歯科医師がいるかどうかを探すことができます。

 

②通いやすい場所にある

 

歯周病の治療は一段落した後も定期的に検査を受け、再発していないを確認するとともにメインテナンスを受けることが重要です。歯周病の進行度によりメインテナンスの間隔は異なりますが、一般的には3ヶ月~6か月に1回の通院を続けます。痛みや腫れがあるときと違い、症状がない場合、さぼりたくなることもあるでしょう。そうしたときにも通いやすい場所であれば頑張ることができます。自宅や職場の近くなど、まずは苦にならない近隣の場所から探してみましょう。

 

③受付や電話の対応がしっかりしている

 

細菌は初診の予約をインターネットで受付できる歯科医院も増えてきましたが、いきなりネットで予約をするのではなく、候補となる歯科医院にまずは電話をかけたり、実際に言って様子を見たりしてほしいと思います。いい歯科医師が院長をしているところは受付を含むスタッフへの教育が行き届いてるので、電話や受付の応対がしっかりしています。困っている症状や受けたい治療、すぐに予約がとれるのかどうかや診察にかかる時間などきになるところも遠慮なく聞いてみてください。ただ、一般的な質問には回答しづらいため、実際には口腔内の検査をしてからでないと細かな質問に対するお答えはだせません。

 

④予約制で十分な時間を取ってくれる

 

歯科医院の多くは予約制。内科の医師などと違い歯科医師は歯を触ったり、削ったり、麻酔をかけたりと手を動かす処置を行うのでう、一人あたりの治療に時間がかかり、1日に診ることのできる患者さんの数が限られるためです。

この予約時間を十分に摂ってくれているかどうかが大事です。歯科医師に限らず歯科衛生士の予約についても同様です。この点は予約時間通りに治療がスタートするかどうかで分かります。良医であればきちんと治療計画を立てているのできんきゅの治療がはいるなどよほどの場合でない限り、予約時間が大きく遅れることは有りません。逆に予約制であるにも関わらずいつも10分、15分と待たせるような場合、同じ予約時間に不空数の患者さんを入れている可能性があります。

ただ、予約については治療前の確認が難しいので、受診したことある患者さんに聞いたり、受付のスタッフに「予約時間通りに治療がスタートしますか?」などと問い合わせてみるといいでしょう。

なお、治療にかかる時間は処置の内容によっても違いますが、一般的に保険診療では一人あたり30分程度で予定を組んでいる歯科医院が多いようです。自由診療の場合はさまざまですが、一時間というところが多く、一つの目安にしてください。

★ いい歯科医師を見抜くポイント

2023年5月24日

「いい歯科医師はどこに行ったら出会えるのか」「何を基準にすればいいのか」…、コンビニより多いといわれている歯科医院の中から一生付き合える理想的な良医を探すのは簡単ではありません。そこで専門家の視点から次の15項目を挙げてみました。大事なあなたの歯を守るために、どの歯科医院が最適か、自分に合う歯科医師はどんな人なのか、項目を参考にじっくり考え、選んでほしいと思います。

 

(1)受診する前

➀歯周病の専門医・認定医であることが目安

②通いやすい場所にある

③受付や電話対応がしっかりしている

④予約制で十分な時間を取ってくれる

 

(2)通院初期

➀院内や機器、スタッフの身だしなみが清潔

②必要な検査をしたうえで、病状や治療計画を丁寧に説明してくれる

③自由診療は見積もりをだす

 

(4)診療開始後

➀患者さんの質問には必ず答えてくれる

②手鏡を持たせて説明する

③メインテナンスの患者さんが多い

④熱心な歯科衛生士がいる

⑤治療内容によっては他の歯科医師を紹介する

⑥定期健診の案内がしっかりしている

⑦歯だけでなく、全身の健康指導を行う

⑧繰り返し禁煙をすすめる

 

詳しくは次回お話いたします。

★歯周病治療は多くの歯科医師がやっているが、内容には差がある

2023年5月23日

歯周病に対してはほとんどの歯科医師が何らかの処置をおこなうことができます。「うちでは歯周病の治療はできません」という歯科医師はまずいないでしょう。しかしながらその内容には差があるのが現状です。具体的なケースを挙げてみましょう。

 

ある男性患者さんは歯周病による歯肉の腫れがひどく、職場近くの歯科医院に飛び込みました。そこでは炎症のある部分を薬で消毒後、抗菌薬(抗生剤)を処方されて処置は終了。プラークや歯石の除去は十分におこなわれず、その後のメインテンスについてもなにも言われませんでした。男性はその後も歯肉が腫れるたびにその歯科医院に行き、同じ治療を受けましたが、あるとき。治療に疑問を感じ、歯周病を専門としている歯科医院を探して受診しました。その段階では歯周病はかなり進行しており、抜かなければならない歯も複数ありました。男性はとてもショックを受けていました…。

 

なぜこのようなことが起こってしまったのでしょうか。

歯周病治療の基本はプラークコントロールです。細菌の塊であるプラークはネバネバとしたバイオフィルムであり、抗菌薬だけでは死滅させることは不可能です。また、歯肉はスケーラーなどの道具を使い機械的に除去しなければ、残ったままです。

これを十分におこなわれないと、歯周病の進行を止めることができません。

また、進行した歯周病は見える部分のプラークコントロールだけでなく、「フラップ手術」で歯肉を開き、奥のたまった歯石を取り除く処置が必要です。こうした外科的治療は歯周病治療の研修施設で歯科医師が指導医からやり方を教わり、何年もかかって身に付けるものなのです。

★ かかりつけの歯科医がいる、と答える人は多いが・・・

2023年5月22日

日本歯科医師会が全国10~70代の男女1万人におこなった調査(「歯科診療に関する一般生活者意識調査」)によると、「かかりつけの歯科医がいる」と回答した人の割合は67%。歯科医師が身近な存在になったともいえる数値です。

 

一方で、「たまたま近くにあるから行っているだけ」という声も、結構聞きます。「かかりつけの歯科医がいる」といっても、実際に通うのは「痛くなったとき」や「腫れたとき」という人もいます。そして治療後のメインテナンスには全く通っていないという声も….。

このような人は本当の意味で、「かかりつけの歯科医がいる」とはいえないでしょう。

これを機に皆さんには、一生付き合っていけるいい歯科医師・衛生士をぜひ、見つけてほしいと思います。なぜならそのことが歯周病の再発を防ぎ、生涯歯を守うことに確実につながってくるからです。

 

信頼できる歯科医師は何年にもわたり、大事な歯を守ってくれます。

歯を失った人の中には、ちょくちょく歯科医院にはいっていたが、いつのまにか残っている歯が、少なくなってしまったというケースが結構あります。歯が悪くなってから受診する、ということを繰り返すと、歯や歯周組織が少しずつ失われていくためです。歯を守るために大事なのはいったん治療を終えた後の管理です。歯周病の場合、メインの治療が終わった後、再発予防の為に口の中をいい状態に維持するメインテナンスに通い続けることです。

メインテナンスこそが歯周病にとって最も大事な治療といっても過言ではありません。ところが多くの患者さんは歯周病の症状がおさまると、病気だったことを忘れ、次第に歯科医院から足が遠のいてしまいます。ところが、歯周病は進行してからでないと症状が現れない「サイレント・ディジーズ」なので、ここで通院をストップしてしまうのはとても危険です。

良医であればこうした状況も踏まえた上で、「なぜ痛みがないのに通う必要があるのか」「毎日、ブラッシングをしているのに、なぜ時間とお金をかけて清掃してもらわなければいけないのか」という疑問に対し、きちんと繰り返し説明してくれます。メインテナンスの時期が近くなるとハガキを送ってくれたり、電話やメールで来院をするように案内してくれることも当然です。良医がいる歯科医院には何年も通い続けている患者さんがたくさんおり、その多くはメインテナンスの為に通院しています。そして年齢にかかわらず、歯や歯肉を良好な状態に維持できています。歯周病の怖さは歯を失うことだけでなく、歯肉の慢性炎症により全身の病気の発症や悪化を引き起こすことです。歯周病のない健康な口腔を維持できている人は、健康寿命を延ばす可能性が高く、一生付き合えるいい歯科医師・歯科衛生士を見つけることで、あなたにもそれが可能となるのです。

 

★ 洗口液を使って化学的プラークコントロールを行う

2023年5月20日

殺菌成分を含む洗口液にはバイオフィルムが歯や歯肉に付着することを抑制する効果と歯肉炎予防効果が期待できます。ブラッシングと併用することでセルフ・ケアの効果を高めることができます。

セルフ・ケアに洗口液を加えることの効果については多くの研究報告があります。29件(対象者5000人以上)の報告を分析したところ、ブラッシングと歯間ブラシまたはデンタルフロスをおこなったグループでプラークの除去効果が有意に高かったという結果が得られています。殺菌成分を含む洗口液は歯面やプラーク(バイオフィルム)の表面に付着して作用するタイプ(イオン系抗菌剤)と、プラーク(バイオフィルム)の深部へ浸透して作用するタイプ(非イオン系抗菌剤)に分類できます。洗口のタイミングや回数は製品に記載されています。

 

ただし、繰り返しになりますが、洗口液だけではプラークは除去できません。一番大事なのは丁寧なブラッシングを中心とした機械的プラークコントロールで、洗口液はこれらの効果を引き出す補助的なものという位置づけです(洗口液で歯周病が治ることは有りません)。洗口液だけで済ませるということが無いようにしましょう。

 

【歯面やプラーク(バイオフィルム)表面に付着して作用する薬剤】

グルコン酸クロルヘキシジン(CHX)

塩化セチルピリジニウム(CPC)

塩化ベンゼトニウム

 

【プラーク(バイオフィルム)深部へ浸透して作用する薬剤】

ポビドンヨード

エッセンシャルオイル

 

全身の健康管理もセルフ・ケアの一環になります。

歯周病は➀口の中の細菌の攻撃力②患者自身の抵抗力③生活習慣(環境)が複雑に絡み合って発症、進行します。このうち②の患者自身の抵抗力については、免疫力の低下が悪化要因となるため、糖尿病のコントールなど持病の管理も大切になります。ストレスをためないとや栄養をしっかり取ることも大事なセルフ・ケアのの一つです。わからないことは歯科医師に相談しながら、上手に口の中の管理をしていきましょう。

★デンタルフロス、歯間ブラシの選び方&使い方

2023年5月19日

ブラッシングの後にはデンタルフロスを使う習慣をつけましょう。WHOの調査によればアメリカでは歯冠清掃具が74%と高い使用率であるのに対して、日本ではまだ39%と使っている人が少ないのです。しかし、これらの補助具によりブラッシングでは取り切れない、歯と歯の間のプラークを取り除くことができます。

 

歯周病ですでに歯肉が下がっていて歯間が大きい人やブリッジで人口の歯と自分の歯が隣り合っている場合は歯間ブラシが向いています。歯と歯の間のすき間が狭く歯間ブラシが通らない人にはデンタルフロスが推奨されます。

歯間ブラシやデンタルフロスに、歯冠のプラークがこびりついてくる様子を見ると、ブラッシングだけではプラークコントロールが不十分であることを実感できます。

 

【デンタルフロス】

歯と歯の間に糸を通して汚れを取りに除く道具です。歯間にいれやすいように糸にワックスをコーティングして滑りを良くしたものが主流ですが、コーティングをしていないアンワックスの方がプラークをしっかり取り除きます。

必要な長さにフロスを切り取り、指に巻きつけるロールタイプとホルダー(支えるための持ち手)にフロスが取り付けられているフロッサータイプがあります。

使い方ですが、ロールタイプは30~40センチを切り取り、親指の先をくっつけた長さで両中指に巻き付けます。

畑尾歯肉の境目よりも少し下、つまり、歯肉に少し隠れるまでそっとフロスを入れ、歯の側面をこするようにして上下に数回動かし、プラークを取ります。同じことを隣の歯でもおこなっていきます。

 

【歯間ブラシ】

歯間ブラシはつま楊枝のような細い針金(ゴム製もある)に清掃のための毛がついたブラシ状の道具です。歯と歯の間に入れてゆっくり動かしていくことで、汚れを除去します。さまざまな太さ(サイズ)のものがあり、自分の歯のすき間に合わせて選びましょう。柄はストレートタイプや曲田タイプなどがありますが、使いやすいものがいいでしょう。なお無理にブラシを挿入すると歯や歯肉を痛めることがあるので注意が必要です。

 

【歯間ブラシの正しい使い方について】

➀ブラシを直角に入れる

歯と歯の間にまず表面(頬側)から垂直方向に歯間ブラシを入れ、ゆっくり動かします。歯間ブラシの先端は歯肉から離して挿入してもかまいません。一度、手をゆるめて差し込んだ方向を確認し、ブラシを前後に動かしてプラークをかき出します。

 

②ブラシの角度を変える

慣れてきたら歯肉や歯面に合わせて手前から奥、裏側(舌側)から手前というように様々な角度から磨いていきましょう。使用後はよく水洗いをして乾燥させ、適宜、新しいブラシに変えていきましょう。

続 日本人はこうして歯を失っていく

日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会

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