★ 歯周病の検査 (5)
2023年3月18日
(5)X線検査
X線検査は歯槽骨の状態を見るために重要です。X線写真では骨の部分は白く映り、歯が失われている部分は黒く映ります。骨がどのくらい減っているかや残っている骨の形を見ると、歯周組織再生療法が必要かどうか、治療の適応かどうかのなどの判定ができます。
また、「根分岐部病変」といって歯の根の分岐部(奥歯などで根が二股、三股に分かれている部分)に歯周炎が発症している場合、解剖学的形態から、進行すると治療がさらに難しくなるので、このような部位は清掃をより厳密におこない、歯周病の進行を防がなければなりません。また、分岐部だけに限りませんが、歯髄に病変がある場合もX線画像上で骨がなくなっていることがあるので、根管治療(歯髄の病気があるときに行う治療)が必要になります。なお、歯科治療で使うX線撮影方法にはいくつか種類がありますが、中でも多く使用されるものが「パノラマX線撮影」と「デンタル(歯科用)X線撮影」です。
パノラマX線は上下のあごの骨を含めたすべての歯を撮影できるもので、親知らずの埋伏の状態など全体の様子がよくわかります。
デンタルX線は一部分にフォーカスして撮影したものです。一度に3本までの狭い範囲に限定されますが、その分、虫眼鏡で拡大したように歯槽骨や歯根の様子が細かくわかります。
最近では、立体像の構築ができるX線写真を撮影できる歯科用CTを使用しているところもあります。
★ 歯周病の検査 (3)(4)
2023年3月17日
(3)歯周ポケットの検査(プロービング)
歯周ポケットの深さと歯周組織の炎症の程度をチェックする検査です。
歯周ポケット(歯と歯肉のすき間)にプローブを挿入し、歯肉の縁からプローブ先端までの距離を測ります。通常、1本につき、4か所または6か所を測定し、1ミリ単位で記録します。3ミリ以下はほぼ正常(歯肉炎はこの範囲にとどまる。なお、健康は歯肉溝の深さは1~2ミリです)
それ以上のポケットは深くなればなるほど、歯周病が進んでいる可能性を示しています。歯周ポケットが深いということは歯周病菌が歯肉の内側に入り、組織を破壊している証拠だからです。
また、プロービング時に出血があるかどうかも大事なチェックポイントです。出血はポケット底部に炎症がある証拠で、すでに歯周炎へと進行中である可能性が高いためです。このため、歯周基本治療の後、再度、この検査を行い、出血がなくなれば症状が安定していると判断します。
(4)歯の動揺度の検査
ピンセットなどで歯を挟んで、歯がどのくらい動くのか、どの方向に動くのかを確かめます。炎症が急速に進んでいたり、歯の土台となる歯槽骨が破壊され減っていたりすると歯を支えるものがなくなり、揺れが大きくなります。
このほか、かみ合わせの問題がないか、ブラキシズム(歯ぎしりなど)がないかなど、歯の動揺度や歯周病の部位と関連しそうな異常がないかどうかを確認します。
★ 歯周病の検査(1)(2)
2023年3月15日
(1)問診
患者さんに受診の理由を確認し、気になる症状や異常について聞きます。問題の起こっている部位やその状況がいつ頃から起きているかなどを聞くことも大事です。
例えば、骨粗鬆症の患者さんの場合、服薬している薬によっては、抜歯や歯周外科治療ができません。場合によっては、主治医に連絡をとり、薬の種類を確認することもあります。
また、家族に歯周病の人がいるかどうかや、喫煙の習慣があるかどうか、喫煙している場合、1日あたりの本数。ストレスの状況なども聞き取ります。歯周病を悪化させるリスクがある場合、できるだけ軽減するようにアドバイスをします。喫煙者には、歯周病治療の効果が十分に得られない為、禁煙することをすすめます。
(2)プラークの付着を確認
口の中の細菌の状態を検査します。患者さんにわかるようにプラークがあるところを染め出す「プラーク染色液」を使ったり、歯周プロープ(目盛りが付いた先端が丸い針)などの先端で歯面をこすり、口の中全体のうち、どのくらいの割合でプラークの付着があるかを確認します。
プラークが多いということは、歯肉の奥にも多くのプラークが潜んでおり、歯周病が進んでいる可能性が高くなります。このほか科学的に歯周病菌を調べる方法として、自費診療になります歯周病ポケット内のプラークや唾液を特殊な方法で採取し、歯周病菌のタイプや数を特定する検査(歯周病原細菌検査)もあります。
短期間で急速に進むタイプの歯周病が疑われる場合、この検査が役に立ちます。
★ 歯周病の検査
2023年3月14日
歯周組織のほとんどは肉眼では見えない部分にあるため、様々な方法で検査する必要があります。検査には歯肉を触るものも含まれるため、腫れや痛みなどがひどい場合は応急処置(プラークコントロールや抗菌剤の投与など)をおこない、落ち着いてから実施します。
治療を開始した後も「治療効果が上がっているかどうか」を確認するために検査をします。さらに治療が一段落した後もメインテナンスの際に定期的に検査を行い、「再発していないか」を確かめていきます。代表的な歯周病の検査について、解説します。
(1)問診
(2)プラークの付着を染色液でプラークを染めて%で表す)
(3)歯周ポケットの検査
(4)歯の動揺度の検査
(5)X線検査
詳しくは次にて解説します。
★ 歯周病治療の流れ
2023年3月10日
最も大事なのは歯周基本治療です。
歯周病治療の大きな流れは「動的治療」と「メインテナンス」です。
両方とも歯科医院で行う治療に含まれています。動的治療の中身は検査(X線撮影、歯周病組織検査、写真撮影など)、歯周基本治療(ブラッシングのやり方指導、スケーリング・ルートプレーニング)、歯周外科治療(フラップ手術や歯周組織再生療法)です。
歯周病の原因は、歯に付着した最近の塊である「プラーク」です。プラークを取り除かなければ、歯周病の進行を食い止めることはできません。そこで治療の第一ステップは、プラークを自分自身で除去できるようなブラシの選択ややり方の指導に始まり、プラークが唾液の成分などで固まってできた歯石を取り除くことに主眼をおきます。これは、「歯周基本治療」と呼ばれるものです。歯周菌治療には歯科医院でスケーラーという器具を使って、歯の表面に沈着した歯石を除去することを主眼としています。これらはスケーリングという処置で、主に歯科衛生士が行います。続いて歯肉の下のザラザラした根面を滑らかにすることをルートプレーニングといいます。こうすることで汚れが再び付着しにくくなるだけでなく、歯肉と根面がぴったりくっついて。歯周ポケットが浅くなる効果が期待できます。
一通り処置が終わったら、治療効果を確認するために歯周ポケットの深さを再度計測するなどの検査を行います。根面の汚れがしっかり取り除けるまで治療とこの検査を繰り返します。軽度の歯周炎までなら、これらの基本的な処置で歯肉の状態はかなりよくなります。
炎症がおさまらなかったり、歯周ポケットが浅くならない場合には次の段階として、歯周外科治療に移行します。歯周外科治療では主にフラップ手術をおこない、歯肉を根面から一度剥がしてプラークや歯石を取り除き、歯肉を元に戻し、歯肉が安定するのを待ちます。歯周組織の再生が期待できる場合は、歯周組織再生療法をおこなうこともあります。
なお、すべての治療が終わったら一段落となりますが、歯周病の治療そのものはこれで終わりではありません。歯周組織が改善しても、時間の経過とともに再びプラークや歯石が沈着して、歯周病が再発するリスクが高まるからです。
このため、定期的に歯科医院を受診して「メインテナンス」をうけていただき必要があります。メインテナンスでは、セルフ・ケアでは落としきれないプラークや歯石を除去し、歯周組織の状態を検査することで歯周病を予防していきます。

続 日本人はこうして歯を失っていく
著 日本歯周病学会・日本臨床歯周学会
★ 歯周病の人はインプラント治療をしてはいけない!?
2023年3月7日
未治療の歯周病があり、適切な治療を受けていない人がインプラントを入れると、うまくインプラントが生着しないばかりか、炎症が起きてインプラント周囲炎になりやすいことが分かっています。
鶴見大学のグループは、インプラントと天然歯の両方がある患者さんの口の中から代表的は6つの歯周病菌を取り出して調べました。その結果、インプラント周囲の歯肉ポケットから検出される細菌と、天然歯から検出される細菌で同じ種類のものが多いことが分かりました。
また、天然歯の歯周病が進行している人では、悪玉菌と呼ばれる病原性の高い歯周病菌、レッドコンプレックスの3種が目立って多いという結果が得られたのです。さらに同一の歯周病菌を詳しく調べてみると菌株が高い確率で一致。これらのことから、天然歯の歯周病菌が唾液を介してインプラント周囲に感染し、炎症やインプラント周囲炎の引き金になっていることが考えられるのです。
★ がんの手術前にも歯周病治療が有効!入院日数が減るデータが!!
2023年3月3日
全身麻酔下での外科手術でおこなう気管挿管の際、歯周病があると、プラーク中の細菌がチューブを通じて肺に送り込まれ、肺炎(人工呼吸器関連肺炎:VAP)を発症しやすくなります。手術後の合併症では誤嚥性肺炎、がんの化学療法や放射線治療中に起こる菌血症(本来、無菌であるはずの血液の中に細菌が入り込む)も同じように基地の中の細菌が危険因子となります。こうしたトラブルを防ぐために、手術前やがん治療の前に、口腔機能管理をおこなう医療機関が増えています。専門的には「周術期航空機脳管理」といわれる医学管理で、202年から健康保険の適用となっています。口腔機能管理の効果は非常に高く、入院日数が減るというデータもあります。食堂がんや胃がんの手術をおこなう消火器外科、心臓の手術をおこなう消火器外科、心臓の手術をおこなう心臓血管外科のほか、悪性リンパ腫などを治療する血液内科でも入院日数が減っているのは興味深い点です。口腔機能管理の対象となる病気は年々増えており、最近では高齢者に多い大腿骨骨折の手術(気管挿管・全身麻酔下での手術)でも実施されています。
★ 歯周病菌がアルツハイマー病を悪化させる?
2023年3月1日
歯周病が認知症の危険因子となる理由は、歯を失うことが大きいといわれてきました。
しかし、アルツハイマー病に関しては歯周病菌が直接、影響を及ぼしている可能性が多くの研究で明らかになってきています。国立長寿医療研究センターと松本歯科大学の共同研究では、P.g菌を投与したアルツハイマー病のマウスの認知機能は、投与しなかった軍に比べ、著しく低下したことが確認されました。さらに脳を調べると、アルツハイマー病の発症に関与しているアミロイドβタンパクの沈着の増加、炎症物質や歯周病菌など細菌が作る毒素の増加が確認されました。
海外では、P.g菌が産生する「ジンジパイン」というたんぱく質分解酵素を阻害することにより、神経の変性やアミロイドβタンパクの蓄積を減らす効果が報告されています。さらに、この阻害薬をアルツハイマー病の患者さんに投与する臨床試験がおこなわれています。今後の研究が期待されます。
★食べることで歯周病予防できる善玉菌がある!?
2023年2月25日
口の中には700種類以上の細菌が生息し、腸に次いで細菌数が多い場所です。歯周病が全身の病気に深くかかわることが明らかになっている現在、腸内環境と同じように口の中の細菌叢のバランスを整える食品等の摂取により、歯周病の予防・治療を目指す考え方が広がってきています。「プロバイオティクス」と呼ばれるものです。背景には抗菌薬の使い過ぎによって発生する、耐性菌の問題もあります。抗菌薬が効かない耐性菌は世界的に脅威となっており、それ以外の方法で病原菌を阻止する治療法がどの分野においても期待されているためです。
すでに研究されているのは乳酸菌の一種の「ロイテリ菌(ラクトバチルス・ロイテリ菌)で、基礎臨床・研究では歯周病菌を抑制する働きが確認されています。また、ほかの乳酸菌の「LS1」や「WB21」を歯周病患者さんが摂取すると、症状の維持や改善傾向が見られたという報告があります。これらの菌が含まれたヨーグルトやタブレットが市販されていますが、あくまで従来の治療の補助的な位置づけであり、それだけで歯周病を治すというものであはありません。

続 日本人はこうして歯を失っていく著 日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会
★ 歯周病菌は腸内細菌にも影響する!
2023年2月22日
腸は体の中で最大の免疫系といわれています。その特徴は約1000兆個もの腸内細菌ん(腸内細菌叢)で、善玉菌と悪玉菌が共生しています。善玉菌は乳酸や酪酸などを作り、悪玉菌の増殖を抑えて病原菌の感染や発がん物質の産生を抑制する働くがあります。このように善玉菌の働きを優勢に保つことが健康につながるわけです。
この重要な腸内細菌叢のバランスに口の中の細菌が関係していることがわかってきました。新潟大学のグループは、歯周病菌のP.g菌をマウスに口から投与して、その影響が全身にどのようにあらわれるか調べました。その結果、血管の炎症反応、脂質代謝の変動(人間における脂質異常症のような変化)、糖尿病で見られる耐糖能異常とインスリン抵抗性の誘導などが確認されたと同時に、腸内細菌のバランスが乱れること(ディスバイオーシス)がわかったのです。ほかには歯周病菌が腸内細菌の中から見つかったという研究報告が複数、出てきています。腸内環境を整えるためにも歯周病対策が重要といえそうです。

続 日本人はこうして歯を失っていく
著 日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会