★ う蝕とう窩は何が違うの?
2023年6月3日
現在のう蝕の病に基づいた治療の話をする前に、う蝕とう窩の違いについて考えてみましょう。
歯面とバイオフィルムの境界では、飲食に伴って1日に何度もpHが大きく変化します。臨界pHを下回れば歯質からミネラルが失われ(脱灰)、pHが回復すれば溶け出たミネラルが歯面に戻ります。(再石灰化)
脱灰と再石灰化を繰り返す中で、そのバランスが崩れて脱灰の時間が多くなるとう蝕が進行していきます。つまり、う蝕とは脱灰と再石灰化の間を絶えず行き来する動的なプロセスといえるでしょう。
一方、う窩は、う蝕というプロセスが進行し、歯質の構造が壊れた結果生じる実質的な欠損状態と言います。
う窩にいくら修復治療を行っても、う蝕を治療したことにはなりません。原因に対処しなければ、またう蝕になってしまうでしょう。う蝕に対しては、そのプロセスをコントロールする「削らない治療」をまず行うことが必要で、それこそが現在のう蝕治療の基盤です。

カリエスブック
著 伊藤直人
現在のう蝕治療は、う蝕のプロセスをコントロールする「削らない治療」を基盤としています。実際の臨床での進め方をみていきましょう。う蝕治療も、歯周治療と同様の流れで進めていきます。まず初期審査(口腔内検査、問診)を行い、現病歴や治療の履歴と併せてう蝕の原因やリスクを診断します。う蝕の部位や罹患時期により原因は異なります。
それを基に、初期治療として削らない治療を行います。削らない治療では、患者さんにう蝕の原因を伝え、う蝕のコントロールに必要な知識を提供し、行動変容を促します。初期治療を経ることではじめて、う窩を削る・削らないの適切な診断が行えるようになります。
再診査、再評価御に、必要に応じて修正療法(削る治療)を行います。う蝕においても、治療後は再発を予防するためのメインテナンスとう蝕サポート治療(SCT:supportive caries therapy)が重要です。カリエスコントロールは、歯がある限り生涯にわたって行う必要があります。

カリエスブック
著 伊藤直人
★ う蝕は感染症?
2023年6月2日
現在、う蝕の病院論はMarshが提唱した「生態学的プラーク説」が支持されています。う蝕はMS菌など特定の細菌の感染によって起こるのではなく、口腔内常在菌の‘‘生体の変化‘‘によっておこるとすると考えで、以下の4つのステップで説明されます。
➀頻回な糖の摂取により、バイオフィルム中のさまざまな細菌が糖を代謝して頻回に酸を産生します。その酸により、細菌にストレスがかかることで細菌の酸産生と耐酸性が増します。
②バイオフィルム中のpHが酸性に傾き‘‘環境の変化‘‘が起こります。
③バイオフィルム中が酸性になると酸に弱い細菌は生き残れなくなり、MS菌、乳酸菌、ビフィズス菌など酸性環境で生き残れる細菌が優勢になります。すなわち‘‘生体の変化‘‘が起こります。
④酸性の環境で生き残った細菌がさらに酸を産生し、歯面の脱灰が進んでう蝕が進行していきます。
頻回の等の摂取や唾液の減少はう蝕リスクを高め、口腔清掃やフッ化物の使用はリスクを低下させます。

カリエスブック
著 伊藤直人
生体学的プラーク説の概念をより細かく説明したものが、高橋とNyvadの「拡大版 生態学的う蝕病因説」です。
以下の3つのステップで説明され、象牙う蝕にはタンパク質分解ステージが追加されます。
➀動的安定ステージ
バイオフィルムの中でさまざまな細菌が糖を代謝し、酸を産生します。当接種の回数が少なく酸性になる頻度が少ない状態では、唾液または細菌の産生するアルカリによって酸は中和され、脱灰と再石灰の平衡状態が保たれます。
②酸産生ステージ
細菌は酸性環境下でも生き残れるよう、さまざまな防御機能を働かせて適応します(酸適応)。
その際、細胞内の酸を細胞外に排出する機能を強化することで、酸産生能が高まります。その結果、脱灰が再石灰化を上回り、エナメル質のミネラルが喪失して初期う蝕病巣が生じます。
③耐酸性ステージ
酸性環境が続くとバイオフィルム中のpHはさらに低くなり、耐酸性能が高く、厳しい酸性環境でも生き残れるMS菌やLacto-bacillusは、さらに酸を産生することでう蝕を促進させます。
★ セカンドオピニオンを聞く
2023年5月31日
治療に疑問や不安が生じた場合は他の歯科医師にセカンドオピニオンを聞いてみるのも1つの方法です。歯周病専門の歯科医師であっても、治療方針や治療計画が異なる場合があります。医科である程度、進んだ癌を手術するべきか、やめるべきかで判断が異なることがあるように、重い歯周病ほどそうした場面は出てきます。抜歯するかしないかもよくあるケースで、グラグラしている歯を、「抜いたほうがいい」という歯科医師もいれば、「残した方がいい」という歯科医師もいます。
歯周病に詳しい歯科医師であれば、このように治療方針が異なる場面が出てくることを良く知っています。ほとんどの歯科医師が快く、セカンドオピニオンを受けることに理解を示してくれるでしょう。嫌がる歯科医師は良医とはいえません。ただし、歯周病関連の治療でセカンドオピニオンを聞く場合、もう一人の歯科医師もこの分野の歯科医師であるべきでしょう。
セカンドオピニオンを受けたい旨をいうと、エックス線画像を含む診療情報を提供してくれるところが一般的です。歯冠どおポ二音先があらかじめ分かっていれば、その歯科医院と連絡を取り合ってくれるケースもあります。セカンドオピニオンを受けた後に元の歯科医師のところに戻りたい場合も、もちろん可能です。それを含めてのセカンドオピニオンなのです。
最後になりますが、一生付き合えるいい歯科医師に出会うためには患者さんにもぜひ、歯周病のことを良く理解してほしいと思います。歯科医師の説明も理解できるので、疑問点について、的確に質問できるようになります。

続 日本人はこうして歯を失っていく
著 日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会
★ 通い始めたしかいいに疑問を感じたら、まずはきちんと話をしてみよう
2023年5月30日
実際に通い始めてみると「思っていたのと違うな」と感じるなどで、歯科医師を変えたくなることもあるでしょう。歯科医師も人間ですから、お互いの相性もあります。歯周病の治療は歯科医師と10年、20年と長く付き合っていくことになるので、我慢を続けるくらいであれば、思い切って別の歯科医院に変えた方がいいでしょう。
ただ、治療に関する不安や疑問点が、歯科医院を変えたくなる理由だとすれば、まずは思い切って歯科医師に話をしてみることをお勧めします。
こんなケースがあります。ようやく見つけた歯周病の専門医のもとに通い始めた患者さんに丁寧な説明、治療をしてくれるところは気に入ってましたが、通院回数が多いことに疑問を感じていました。治療で痛みがなくなり、「今日で終わりか?」と思ったら、「また、来週来てくださいね」の繰り返し。「本当はよくなっているのに、利益のために通院させようとしているのでは」という疑念もわいてきました。
そこで思い切って聞いてみたところ、患者さんは重度の歯周病で初診時には歯肉に強い炎症があったため、これがおさまるのを待って慎重に処置を進めていたことが分かりました。炎症がひどい状態で歯石を取り除いたり、歯肉を開いてフラップ手術をしたりすると、健康な歯肉にも悪影響を及ぼし、歯肉が下がるなど見た目も悪くなりやすいのです。
概要については歯科医師も説明をしていましたが、細かいところまでは伝わっていなかったようです。患者さんは歯科医師がまとめてを治療をしない理由も初めて知りました。そしてこの歯科医師が自分のために丁寧な処置をしてくれていたことを知り、それからは全面的に信頼を置いて治療を受けることができるようになりました。
★ 通院開始後
2023年5月29日
➀患者さんの質問には必ず答えてくれる
治療計画に納得してスタートしても、実際に治療が始まるとわからない部分、不安なことはたくさん出てくるものです。良医であればこうした患者さんの気持ちに寄り添い、質問にきちんと答えてくれます。「治療の際は歯が痛むことはないのか?」「治療後はすぐに食事ができるのか?夜にはお酒を飲んでいいのか?」「口をずっと開けているのがつらいのだが、そのときはどうすればいいのか?」など、何でも聞いてみましょう。治療中に話したい場合は「手を挙げてもらえればすぐに治療をストップしますよ」などと言ってくれるでしょう。
また、良医であれば患者さんの歯の10年後、20年後の予測ができます。歯は毎日使うものですから永遠に同じ状態を維持できるわけではありません。その歯が将来どうなるか、ダメになった場合にどのような選択肢があるかなどについても見通しをたて、その対策について説明してくれるでしょう。これは歯科医師がその患者さんと長く付き合っていく覚悟、口の中をいい状態に保ち続けてあげたいという意思の表れなのです。
②手鏡を持たせて説明する
治療のとき、歯科医師や歯科衛生士から手鏡を渡され「これで口の中を見てください」といわれた経験はないでしょうか。
手鏡は患者さん自身に口の中の状態を確認してもらうためのものです。歯肉の腫れや色を確認したり、ブラッシング指導の際に磨き残しをチェックしたり、さまざまな場面で使われます。「いちいち面倒だな」と思うかもしれませんが、患者さん自身に課題を認識してもらい、治療に参加してほしいという歯科医師や歯科衛生士の熱意のあらわれです。
③メインテナンスの患者さんが多い
メインテナンスの患者さんが多い歯科医院はそれだけ歯周病治療に熱心で精通しており、患者さんに治療計画をきちんと説明している証拠です。待合室で他の患者さんにメインテナンスを受けに来ているのかどうか、聞いてみるのもいいでしょう。また、受付スタッフが、「今日は定期健診ですね」「次回のメインテナンスはいつにしましょうか」などと声をかけている患者さんが多いことも目安です。
また、こうした歯科医院ではスタッフが治療時から、メインテンスの大切さについて繰り返し話していることでしょう。「うるさいな」と思うこともあるかもしれませんが、これはスタッフ一同が真剣に治療に取り組んでいる証拠でもあるのです。
④熱心な歯科衛生士がいる
「プラークコントロール」が治療の中心となる歯周病では、歯科衛生士のスキルが歯科医師と同じくらい重要とされています。プラークや歯石を取り除く処置は、治療、メインテナンスとともに、歯科衛生士が中心となって取り組みます。メイン手ナンスの時期に入ると歯科医師よりも歯科衛生士との付き合いの方が長くなることが一般的です。
歯科衛生士がプラークや歯石を残さず、完璧に取り除く技術は簡単に取得できるものではなく、歯周病の知識を学ぶと同時に、多くの経験を積む必要があります。経験を通して、ほんのわずかな歯石でも取り残しがあったり、日々のブラッシングで磨き残しがあると、歯肉の炎症が再び起こってくる歯周病の怖さを目のあたりにしているからこそ、技術のスキルアップや患者さんのブラッシング指導にも熱がはいるというわけです。
良医は熱意があり腕のいい歯科衛生士を雇っているものですが、歯科衛生士の腕を示す資格としては日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会が認定する認定歯科衛生士が一つの目安になります。
歯周病の知識を学び、技術を習得した歯科衛生士であることの証明だからです。
なお、歯科衛生士は歯科医師と同様に、担当制であることが望ましいでしょう。歯科衛生士は患者さんと話す機会が増えることで性格状況を詳しく知ることができ、より患者さんに会った適切な処置、セルフ・ケアの提案ができます。
⑤治療内容によっては他の歯科医師を紹介する
自分の得意でない分野の治療が必要になったら、適宜、他の歯科医師に紹介をする────、これはとても大事なことです。よくあるのは親しらずの抜歯をする必要が出てきた場合です。親知らずは歯の向きや状態によっては抜歯時のリスクが大きいこともあり、このような場合は専門の技術を持った口腔外科の歯科医師にやってもらうほうが安心です。患者さんにしてみれば、「主治医が自分でできないなんて実力がないのだろうか」と考えてしまいがちですが、それは大きな誤解で、むしろ、患者さんのことを思っているからこそ紹介するのです。
⑥定期健診の案内がしっかりしている
歯周病は症状が落ち着いた後も定期的にメインテナンスを受けることが大事ですが、症状が落ち着くとついついさぼってしまうという患者さんが多いのも事実です。いい歯科医院はこうしたことがないように定期健診(メインテナンス)の案内をしっかり行っております。やり方はさまざまで、患者さんに来院の予約を取ってもらっているところもあればハガキで連絡するところ、電話やメールで連絡したり、これらを組み合わせているところもあります。
⑦歯だけでなく、全身の健康指導を行う
歯周病は歯を失うだけでなく、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞など全身の病気と深い関連があります。例えば進行した歯周病があると糖尿病も悪化します。すでに生活習慣病などにじゃ買っている患者さんにとっては、病状に直結する大事な情報になるので、良医であれば患者さんにこうしたことをきちんと話します。問診表などでからだの病気についてあらかじめ聞いたりもします。
また、良医は医師とも連携をしています。治療と直接、関係が無くても患者さんがからだの不調を訴えたり、健康についての相談を受けたりした場合は必要に応じて医師を紹介してくれるものです。
⑧繰り返し禁煙をすすめる
タバコは歯周病を確実に悪化させます。喫煙をしている患者さんにたばこの害について話し、禁煙を勧めてくれることは良医である証拠です。禁煙のためのパンフレットなどを見せて熱心に禁煙支援に取り組む歯科医院があります。依存度が高く、やめたいけれどやめられない、といった場合は禁煙外来を紹介してくれるはずです。
★ 通院初期
2023年5月26日
➀院内や機器、スタッフの身だしなみが清潔
歯周ポケットを計測したり、プラークや歯石を除去したり、歯肉をメスで開いたりというような検査や処置が日常的におこなわれている歯科医院では、処置によってできた傷に病原菌が感染しないように、最大の注意をしなければなりません。
また、多くの患者さんがやってくる環境の中では専用の装置を使って治療器具の消毒、滅菌を実施したり、必要に応じてディスポーザブル(使い捨て)の器具を使うなど患者さんを介しての感染が起こらないよう、衛生管理への高い意識が求められます。
こうした点を見極めることは一見、難しそうに思えます。しかし、実はところどころにチェックポイントはあるのです。まず、歯科医院に足を踏み入れた際「清潔感がある」と感じられること。治療台(デンタルユニット)の周辺、治療器具、トイレなどを見たときに汚れていない、ホコリがたまっていない、歯科医師や歯科衛生士の身だしなみに清潔感があることも目安になります。
②必要な検査をしたうえで、病状や治療計画を丁寧に説明してくれる
患者さんは何らかの症状があって歯科医院に行くことがほとんどです。「痛みや腫れの原因は何だったのか?悪い病気ではないのか?」「治療で良くなるのか?」「どんな治療でどのくらい通えばよくなるのか?」とたくさんの不安や疑問を抱えているはずです。
こうした点について、歯科医師の方から丁寧に説明してくれる、それが良医です。説明の前提として必要な検査を実施してくれることはいうまでもありません。歯周病の場合はX線撮影のほか、歯周ポケットの深さを調べたり、出血の有無などを確認したりという検査をきちんと実施した上で、検査結果を説明しながら、「どうやったら今の症状を抑えられ、再発を予防できるか」といった治療計画を示します。
X線画像の見方などをわかりやすく解説してくれる歯科医師ならなおよいでしょう。また、治療計画については、神座産の予防もちゃんと聞き、通院頻度などの相談に乗ってくれることも大事でしょう。治療計画を納得した上でスタートしましょう。
③自由診療は見積もりを出す
保険診療は全国一律、どこでもほぼ同じ料金で受けられるのに対して、自由診療は歯科医院ごとに料金が違い、人によっては高いと感じる場合もあるでしょう。ただし、保険診療では使える治療機器や素材が治療ごとに決まっているのに対して、自由診療は限定されず、その分、きめ細やかな治療、長持ちする治療が実現できることは確かです。また、料金が高い分、診る患者さんを限定できるので、一人当たりに十分な治療時間をかけられる点もメリットです。歯科医院を選ぶ場合はどちらの診療スタイルなのかを確認し、治療の特徴やメリット、デメリットを聞いた上で選びましょう。特に自由診療では料金がいくらかかるのかを確認し、治療前に見積もりを出してもらいましょう。これを拒否する歯科医院はいい歯科医院ではありません。
★ 受診する前
2023年5月26日
➀歯周病専門医・認定医であることが目安
歯周病の治療はこの分野に詳しい歯科医師のもとで受けましょう。そして、担当制であることが望ましいです。大学病院などの歯科では「歯周病外来」「保存科」などと表示されています。
一方、一般の歯科医院は「歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「口腔外科」の4つのみしか標榜科目が認められていないため、わかりにくものです。そこで歯周病に詳しい歯科医師の目安となるのが「歯周病認定医」または「歯周病専門医」の資格です。
認定医や専門医の制度は、各学会が専門知識と技術を持った歯科医師を養成するために設けている制度です。歯周病の認定医制度については、日本臨床歯周病学会と日本歯周病学会が設けています。
日本臨床歯周病学会では会員であり3年以上歯周病の治療にかかわり、かつ研修施設で3年以上の研修を受け、認定試験に合格した歯科医師に「歯周病認定医」の資格を与えています。日本歯周病学会では学会に所属して3年間、指定された研修の受講などの条件をクリアし、認定試験に合格した歯科医師に「歯周病認定医」の資格を与えています。
認定医の試験では、歯周病の患者さんの治療例を複数、提出することが求められます。治療例は歯周病の進行がおさまった後のメインテナンス期間も診た上で、治療がうまくいったものを提出しなければならないので、簡単ではありません。
さらに歯周病専門医になる条件は厳しく、これら2つのどちらかの認定医資格を取得した後、日本歯周病学会の認めた研修施設に通算2年以上所属し、歯周病学の研修と臨床試験を有するなどの条件をクリアしたうえで、専門医試験に合格することで初めて取得できるものです。
その後も登録後5年ごとに更新が必要で、そのための条件として出席しなくてはならない講習会などもたくさんあります。認定医や専門医の資格認定証は歯科医院の待合室に提示されていることが多いです。また、歯周病専門医は厚生労働省から広告できる資格名として認められているので、歯科医院の看板やホームページに記載があることもあります。
また、歯周病認定医、歯周病専門医の全国リストは各学会(日本歯周病学会と日本臨床歯周病学会)のホームページにも掲載されており、近くにその歯科医師がいるかどうかを探すことができます。
②通いやすい場所にある
歯周病の治療は一段落した後も定期的に検査を受け、再発していないを確認するとともにメインテナンスを受けることが重要です。歯周病の進行度によりメインテナンスの間隔は異なりますが、一般的には3ヶ月~6か月に1回の通院を続けます。痛みや腫れがあるときと違い、症状がない場合、さぼりたくなることもあるでしょう。そうしたときにも通いやすい場所であれば頑張ることができます。自宅や職場の近くなど、まずは苦にならない近隣の場所から探してみましょう。
③受付や電話の対応がしっかりしている
細菌は初診の予約をインターネットで受付できる歯科医院も増えてきましたが、いきなりネットで予約をするのではなく、候補となる歯科医院にまずは電話をかけたり、実際に言って様子を見たりしてほしいと思います。いい歯科医師が院長をしているところは受付を含むスタッフへの教育が行き届いてるので、電話や受付の応対がしっかりしています。困っている症状や受けたい治療、すぐに予約がとれるのかどうかや診察にかかる時間などきになるところも遠慮なく聞いてみてください。ただ、一般的な質問には回答しづらいため、実際には口腔内の検査をしてからでないと細かな質問に対するお答えはだせません。
④予約制で十分な時間を取ってくれる
歯科医院の多くは予約制。内科の医師などと違い歯科医師は歯を触ったり、削ったり、麻酔をかけたりと手を動かす処置を行うのでう、一人あたりの治療に時間がかかり、1日に診ることのできる患者さんの数が限られるためです。
この予約時間を十分に摂ってくれているかどうかが大事です。歯科医師に限らず歯科衛生士の予約についても同様です。この点は予約時間通りに治療がスタートするかどうかで分かります。良医であればきちんと治療計画を立てているのできんきゅの治療がはいるなどよほどの場合でない限り、予約時間が大きく遅れることは有りません。逆に予約制であるにも関わらずいつも10分、15分と待たせるような場合、同じ予約時間に不空数の患者さんを入れている可能性があります。
ただ、予約については治療前の確認が難しいので、受診したことある患者さんに聞いたり、受付のスタッフに「予約時間通りに治療がスタートしますか?」などと問い合わせてみるといいでしょう。
なお、治療にかかる時間は処置の内容によっても違いますが、一般的に保険診療では一人あたり30分程度で予定を組んでいる歯科医院が多いようです。自由診療の場合はさまざまですが、一時間というところが多く、一つの目安にしてください。
★ いい歯科医師を見抜くポイント
2023年5月24日
「いい歯科医師はどこに行ったら出会えるのか」「何を基準にすればいいのか」…、コンビニより多いといわれている歯科医院の中から一生付き合える理想的な良医を探すのは簡単ではありません。そこで専門家の視点から次の15項目を挙げてみました。大事なあなたの歯を守るために、どの歯科医院が最適か、自分に合う歯科医師はどんな人なのか、項目を参考にじっくり考え、選んでほしいと思います。
(1)受診する前
➀歯周病の専門医・認定医であることが目安
②通いやすい場所にある
③受付や電話対応がしっかりしている
④予約制で十分な時間を取ってくれる
(2)通院初期
➀院内や機器、スタッフの身だしなみが清潔
②必要な検査をしたうえで、病状や治療計画を丁寧に説明してくれる
③自由診療は見積もりをだす
(4)診療開始後
➀患者さんの質問には必ず答えてくれる
②手鏡を持たせて説明する
③メインテナンスの患者さんが多い
④熱心な歯科衛生士がいる
⑤治療内容によっては他の歯科医師を紹介する
⑥定期健診の案内がしっかりしている
⑦歯だけでなく、全身の健康指導を行う
⑧繰り返し禁煙をすすめる
詳しくは次回お話いたします。
★歯周病治療は多くの歯科医師がやっているが、内容には差がある
2023年5月23日
歯周病に対してはほとんどの歯科医師が何らかの処置をおこなうことができます。「うちでは歯周病の治療はできません」という歯科医師はまずいないでしょう。しかしながらその内容には差があるのが現状です。具体的なケースを挙げてみましょう。
ある男性患者さんは歯周病による歯肉の腫れがひどく、職場近くの歯科医院に飛び込みました。そこでは炎症のある部分を薬で消毒後、抗菌薬(抗生剤)を処方されて処置は終了。プラークや歯石の除去は十分におこなわれず、その後のメインテンスについてもなにも言われませんでした。男性はその後も歯肉が腫れるたびにその歯科医院に行き、同じ治療を受けましたが、あるとき。治療に疑問を感じ、歯周病を専門としている歯科医院を探して受診しました。その段階では歯周病はかなり進行しており、抜かなければならない歯も複数ありました。男性はとてもショックを受けていました…。
なぜこのようなことが起こってしまったのでしょうか。
歯周病治療の基本はプラークコントロールです。細菌の塊であるプラークはネバネバとしたバイオフィルムであり、抗菌薬だけでは死滅させることは不可能です。また、歯肉はスケーラーなどの道具を使い機械的に除去しなければ、残ったままです。
これを十分におこなわれないと、歯周病の進行を止めることができません。
また、進行した歯周病は見える部分のプラークコントロールだけでなく、「フラップ手術」で歯肉を開き、奥のたまった歯石を取り除く処置が必要です。こうした外科的治療は歯周病治療の研修施設で歯科医師が指導医からやり方を教わり、何年もかかって身に付けるものなのです。
★ かかりつけの歯科医がいる、と答える人は多いが・・・
2023年5月22日
日本歯科医師会が全国10~70代の男女1万人におこなった調査(「歯科診療に関する一般生活者意識調査」)によると、「かかりつけの歯科医がいる」と回答した人の割合は67%。歯科医師が身近な存在になったともいえる数値です。
一方で、「たまたま近くにあるから行っているだけ」という声も、結構聞きます。「かかりつけの歯科医がいる」といっても、実際に通うのは「痛くなったとき」や「腫れたとき」という人もいます。そして治療後のメインテナンスには全く通っていないという声も….。
このような人は本当の意味で、「かかりつけの歯科医がいる」とはいえないでしょう。
これを機に皆さんには、一生付き合っていけるいい歯科医師・衛生士をぜひ、見つけてほしいと思います。なぜならそのことが歯周病の再発を防ぎ、生涯歯を守うことに確実につながってくるからです。
信頼できる歯科医師は何年にもわたり、大事な歯を守ってくれます。
歯を失った人の中には、ちょくちょく歯科医院にはいっていたが、いつのまにか残っている歯が、少なくなってしまったというケースが結構あります。歯が悪くなってから受診する、ということを繰り返すと、歯や歯周組織が少しずつ失われていくためです。歯を守るために大事なのはいったん治療を終えた後の管理です。歯周病の場合、メインの治療が終わった後、再発予防の為に口の中をいい状態に維持するメインテナンスに通い続けることです。
メインテナンスこそが歯周病にとって最も大事な治療といっても過言ではありません。ところが多くの患者さんは歯周病の症状がおさまると、病気だったことを忘れ、次第に歯科医院から足が遠のいてしまいます。ところが、歯周病は進行してからでないと症状が現れない「サイレント・ディジーズ」なので、ここで通院をストップしてしまうのはとても危険です。
良医であればこうした状況も踏まえた上で、「なぜ痛みがないのに通う必要があるのか」「毎日、ブラッシングをしているのに、なぜ時間とお金をかけて清掃してもらわなければいけないのか」という疑問に対し、きちんと繰り返し説明してくれます。メインテナンスの時期が近くなるとハガキを送ってくれたり、電話やメールで来院をするように案内してくれることも当然です。良医がいる歯科医院には何年も通い続けている患者さんがたくさんおり、その多くはメインテナンスの為に通院しています。そして年齢にかかわらず、歯や歯肉を良好な状態に維持できています。歯周病の怖さは歯を失うことだけでなく、歯肉の慢性炎症により全身の病気の発症や悪化を引き起こすことです。歯周病のない健康な口腔を維持できている人は、健康寿命を延ばす可能性が高く、一生付き合えるいい歯科医師・歯科衛生士を見つけることで、あなたにもそれが可能となるのです。