★歯周病第1段階 歯肉炎
2022年4月2日
歯周病菌が歯と歯肉のすき間に侵入すると、歯肉は炎症を起こし、赤く腫れて出血します。
これは、異物である歯周病菌を追い出そうとする防御反応です。
同時に、健康な時は1~2ミリだった歯肉溝は、歯肉が腫れることによって、見かけ上、
歯と歯肉の境い目が深くなる「化性ポケット」と呼ばれる溝を形成します。
この「歯肉炎」の段階ならブラッシングや、
歯科医師によるプラークと歯石(プラークが固まって取りにくくなったもの)の除去など
適切なケアをすれば、歯肉の炎症はおさまり、化性ポケットをもとの浅い状態に戻すことができます。
★歯周病はこうして発症・進行する
2022年4月1日
私たちの口の中には、一般的に培養できるものだけでも400~500種類ほど、
培養できない細菌を入れれば700種類ともいわれるさまざまな細菌が棲みついています。
これらの細菌のうち、むし歯の原因菌は口の中に残った糖分などをエサに、
一方、歯周病菌はタンパク質やアミノ酸をエサにして、歯の周囲にプラーク(歯垢)と呼ばれる
白くネバネバした物質を作り出します。
歯の表面を爪でなぞってみると、爪には白っぽいいわゆる歯くそが付いてきます。
これがプラークです。ブラッシングを怠けてたり、磨き残しがあったりすると、
歯に付着したプラークの層はどんどん厚くなり、歯周病菌がくっつきやすくなってしまうのです。
プラークが取り付いた歯周病菌は心地よい住環境を求め、空気が届きにくい歯と歯肉間に向かって
移動を始めます。ここにはもともと歯肉溝といわれる1~2ミリのすき間があり、
歯周病菌はこの歯肉溝から奥へ奥へと潜り込んでいきます。
★歯周病の進行の仕方
2022年3月30日
歯周病菌は空気が大嫌いです。
まず、歯周病とは一言で説明するならば、歯そのものではなく、
歯を支えている歯槽骨や歯肉などの歯周組織が最近に侵され、破壊される感染症です。
歯周病の原因になる細菌はわかっているだけでも100種類以上あり、
これらをまとめて歯周病菌と呼んでいますが、このうちよく見られるポピュラーなものは、
10種類ほどです。人それぞれ原因となる歯周病菌は異なり、一人1種類ではなく、
いくつかの歯周病菌がかかわっているといわれています。
歯周病菌の最大の特徴は、空気が大嫌いな「嫌気性菌」だということです。
むし歯も歯周病菌と同じ感染症ですが、虫歯の主な原因となるミュータンス菌は空気が好きなので、
歯の表面など表立ったところで活動しています。
一方歯周病菌は空気が届きにくい歯と歯肉のわずかなすき間を好み、
ここから奥に入り込んでジワジワと勢いを増していきます。
日本人はこうして歯を失っていく
日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会 より
★歯周病は1本歯を失うだけでは済まされない
2022年3月29日
歯を失えば容貌が変わりますし、抜けたままでは十分に噛めないので、
入れ歯などで補う必要が出てきます。
厚生労働省が、6年に1回実施している歯科疾患実態調査では
何らかの義歯(ブリッジ、部分入れ歯、総入れ歯)を使っている人の割合は
45~54歳ですでに35%、55~64歳では60%を突破、後期高齢者の75歳以上になると
90%近くに達しています。
むし歯はその部分だけ補修すれば済みます。
歯周病は、歯を支えている歯槽骨などの地盤部分がもろくなって地盤沈下を起こしている状態で、
治療で地盤を強化しなければウワモノまで崩れてしまいます。
さらに同じ環境にさらされている周囲の地盤も弱っているので、他の歯にまで被害が拡大し、
最終的には全ての歯を失うことになりかねません。
75歳以上の3分の1以上は総入れ歯になっているという現実の背景には歯周病が大きく関与しているのです。
★歯を失う原因のトップは歯周病
2022年3月26日
歯を失う原因は、むし歯だと考えてる方が多いと思いますが、
日本人が歯を抜かなければならなくなる原因のトップは歯周病です。
抜歯はこれまで何十年も一緒に過ごしてきた歯との永遠の別れです。
むし歯になって穴が開いたり、治療で削ったり、神経を抜いたりしても、
自分の歯があるというのはその人にとって大きな安心感があるはずです。
その歯を抜かなければならないと告げられ、ショックを受けない患者さんはいません。
抜きたくない、なんとか抜かなくて済む方法はないかと懇願されることも多いですし、
受け入れられないままで他の歯科医院を受診して、
セカンドオピニオンを求める患者さんもたくさんいます。
★電動歯ブラシのコツをつかんでおこう
2022年3月19日
歯ブラシを手で小刻みに動かすブラッシングの動作は
加齢で手が動きにくくなると難しくなったりします。
個人差はありますが、だいたい65歳前後から動かし方が大ざっぱになったり、
磨きにくい奥歯は動かせていなかったりという様子か見られるようになります。
患者さん自身は変化に気づきにくいのでこれまでと同じように磨いてるつもりなのに、
磨き残しを指摘されたという人は注意が必要です。
こんなときに頼りになるのが電動歯ブラシです。
電動歯ブラシは磨きたい部分に当てるところまでは自分でやらなければなりませんが、
それ以降の細かく動かす動作を代わりにやってくれます。
電動歯ブラシはいくつかタイプがあり、使い方が多少違うため、
いずれ電動歯ブラシを使いたいと考えている人は60代から慣れておくとよいでしょう。
★犬の8割近くは歯周病予備軍!?
2022年3月18日
歯周病は人間だけでなく動物にも発症する病気です。
特に犬には歯周病が多いことが明らかになっています。
780匹の犬の歯科検診の結果を分析したところ、76.3%に歯垢や歯石の沈着といった
歯周予備軍といえる症状が見つかりました。
ペットも高齢化が進み、歯周病の発症率が増えているのです。
実は人間の歯周病菌と同一の菌が犬の口から検出されたという報告がされています。
ペットと飼い主で歯周病菌を相互にうつしあっている可能性も考えられるということなのです。
人間が食べものを噛みちぎってペットに与えたり、ペットが人間の口を舐めたりする行為が
歯周病菌の感染ルートになっているかもしれません。
なおペットは歯垢が歯石に変化するスピードが速い、ブラッシングが難しい、
痛みや違和感を自分で訴えられない、といった理由から人間よりも歯周病が重症化する傾向にあります。
日本人はこうして歯を失っていく
日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会 より
★早期に歯周病を治療すれば医療費を削減できる!
2022年3月16日
急速に高齢化が進む日本では、増大する医療費が問題になっています。
各家庭においても、老後に向けて医療費支出をどう抑制するかが課題と言えます。
自動車部品メーカー・デンソーの健康保険組合が被保険者の医療費を分析したところ、
歯周病にかかっている人はかかっていない人よりも、歯科だけでなく医科(歯科以外の病気)の
一人当たりの医療費も年間平均1万5800円多くかかっていることがわかりました。
60歳以上になるとこの差は、3万円前後まで広がります。
デンソーの場合、定期的な歯科検診を実施している事業所では医療費が
5年間で最大23%減少していたのに対し、実施しなかった事業所では24%増加していたとのこと。
歯周病の予防や早期発見・治療は、生涯にわたる医療費を抑えるポイントと言えそうです。
★歯周病の治療をすると糖尿病も改善する
2022年3月14日
歯周病と糖尿病には密接なかかわりがあります。
歯周病の人は糖尿病を併発していることが多く、
また、糖尿病患者は歯周病が重症化しやすいこともわかっています。
歯周病が悪化すると糖尿病も悪化する、それならば歯周病を治療すれば
糖尿病が改善するのではないかとそれを明らかにした研究結果がいくつか発表されています。
歯周病と2型糖尿病を併発している患者に歯周病の治療(スケーリング+歯周ポケットへ抗菌薬を注入)を
実施し、治療前と後でHbA1c(糖尿病の指標)を比較しました。
その結果、治療後にはHbA1cが明らかに改善していたのです。
また血糖値を下げるインスリン(ホルモンの一種)を作りにくくするNFーa(腫瘍壊死因子)の
血中濃度も、減少していました。
糖尿病を治療中の人は、すぐに歯周病の治療も始めましょう。
★バージャー病と歯周病の関係
2022年3月12日
バージャー病は、タバコを吸う20代から40代の男性に多い難病で、
閉塞性血栓血管炎とも呼ばれます。日本には約1万人の患者がいるとされています。
バージャー病を発症すると、手足の末端の血管が詰まって炎症が生じて、
皮膚に痛みや潰瘍を起こし足が腐ってしまいます。
これまで原因不明とされてきましたが、東京医科歯科大学の研究グループが
バージャー病患者14人を調べたところ、全員が中等度から重度の歯周病と診断されました。
さらにバージャー病患者の患部から取り出した血管試料の大半から、
歯周病菌が検出されたのです。一方、正常血管の試料からは歯周病菌は全く検出されませんでした。
この研究によって、バージャー病の原因や悪化には口の細菌、
特に、歯周病菌がかかわっている可能性が濃厚になりました。