★ う蝕の削らない治療とは?
2023年06月9日
う蝕治療の基盤となる「削らない治療」の主体は、患者さんと歯科衛生士です。
削らない治療の柱は2つ
〇患者さん自身がう蝕のコントロールの為にとる行動
〇歯科医院で歯科衛生士が患者さんに行う指導や処置
このうち、患者さん自身が毎日の生活の中で行うう蝕のコントロールは治療の中核となるため、非常に重要です。
歯科衛生士が、患者さんに口腔内の状況やう蝕の原因・リスクを丁寧に説明し、う蝕のコントロールに効果的な行動を日常的にとれるよう手助けすることが成功の鍵となります。従来の削る治療には歯科医師の知識や技術が必要でしたが、削らない治療には歯科医師と歯科衛生士のカリオロジーの知識が不可欠です。
カリオロジーの知識をベースに、筆者が臨床で試行錯誤しながら作り出したう蝕の削らない治療のシステムがNICCS(ニックス)になります。
う蝕の病因が「特定の細菌による感染」から「細菌叢における環境と生体への変化」へとシフトしたのに伴い、う蝕にかかわる因子の根トロルを目的とした「削らない治療」の重要性が増してきました。
削らない治療は患者さんが主体になるため、効果的な患者教育が欠かせません。患者さん個々のリスクを適切に評価し、リスクに応じた行動変容を促す必要があります。しかし、さまざまなう蝕リスク検査を導入しても、患者教育に偏りや漏れが生じてしまい、失敗を数多く経験することがあります。その反省を踏まえ、試行錯誤しながら数多くのカリオロジーのエビデンスを臨床に落とし込み、独自に作り出したう蝕ケアシステムが「NSCCS(ニックス)」です。
NICCSでは、FejerskovとManjiのう蝕に関わる因子の中から、患者さん自身が改善可能な因子をピックアップし、そこに、細菌叢に影響を与え、複合う蝕を引き起こす「酸」を追加しました。そして、患者さんの行動変容を促しやすくするため、う蝕の因子に優先順位をつけ患者さんがとるべき行動を極力シンプルに絞り込みました。
著 伊藤直人